<ヤクルト3-4横浜>◇12日◇神宮

 延長12回2死に「おいしい」場面が待っていた。打ち取られたら勝ちはない。だが内川聖一内野手(26)に土俵際の感覚はなかった。鎌田の初球変化球を振り抜く。打球が左翼席へ飛び込む前に、右腕を天に突き上げた。決勝の13号ソロ。打率も3割1分7厘と、1位の中日井端に2厘差と詰め寄った。

 内川コールに包まれてクラブハウスへの道を歩く。「正直、ここで本塁打打ったらカッコいいなと思いましたけど、そんなおいしいことはないかなと」。4番村田はいない。昨夜11日は延長で悔しいサヨナラ負けも喫している。「ぼくらは村田さんを見てきた。ああいう場面で打つ人がいないんだから、誰かが何とかしないと」と、ひと振りで決める役を背負っていた。

 村田がいなければストライクゾーンで勝負してもらえる場面は確実に少なくなる。だが低迷するチームをけん引しなければならない。「まだまだ、やることはありますから」。個人の数字は後からついてくる。貪欲(どんよく)になる必要があるのは、チームの勝利であることを十分理解していた。【今井貴久】

 [2009年8月13日8時43分

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