「トリック」の堤幸彦監督の構想20年という肝いりやった、今夏放送の連続ドラマは、豪快な低視聴率やった。今度は映画。正直、意見は分かれるやろうが、ハマる人はハマるはずや。

 ペロッとなめたら、成分が全部わかる「絶対舌感」を持つ蘭丸(向井理)は、口内細菌を気にせずキスできた唯一の女性に失恋し、行き倒れ、鬼灯(ほおずき)村の女医りん(木村多江)の人工呼吸に助けられる。りんの口内に違和感がなかった蘭丸は伝説の浴場従業員(背中とか流してくれる人)の孫であることを生かし、村の温泉で働くことに-。

 怪優佐藤二朗の語りで始まるオープニング、主人公のおかしな能力、登場人物の奇妙なボケ、舞台の怪しさ、不可思議な天変地異、劇中の文字のスタイル…。ばかばかしさ連発で、噴き出してしまうシーンもあって、退屈せんのは間違いない。まんま「トリック」です。仲間由紀恵と阿部寛が、向井、佐藤、木村文乃になっただけっちゅうかね。こう書くとダメみたいやけど、堤ワールドが好きな人なら、ノー文句で楽しめるという意味です。

 それにしても写真の向井が、神木隆之介に見えて仕方ないんは私だけかな。【加藤裕一】

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