21日のリオデジャネイロ五輪閉会式はブラジルの文化、芸術、それを連綿と育む人間をたたえる内容だった。先史時代の洞窟壁画までさかのぼったかと思えば現代美術が現れる。ブラジル人が創造的で絶え間なく革新し続けていく人々であると再認識させることを、演出チームは狙った。

 まず描き出されたのはリオデジャネイロの景観。ダンサーが人文字のようにキリスト像やポン・ジ・アスーカルと呼ばれる丘などリオを象徴する風景を作り上げて、その美しさを表現した。

 サンバ歌手マルチーニョ・ダ・ビラ氏は娘や孫娘らと名曲「カリニョーゾ」を披露。3世代の競演は、文化が世代を超えて引き継がれていくことを象徴した。

 北東部ピアウイ州の世界遺産セラ・ダ・カピバラ国立公園の洞窟壁画に描かれた動物たちが動きだす。先住民の芸術からインスピレーションを得て幾何学模様を形作るパフォーマンス。現代の文化が過去とつながっていることを示した。

 ポルトガルの植民地時代に持ち込まれ、舞踏と共に紹介されたレース編みもブラジル北東部に根付いた伝統工芸として今に引き継がれている。粘土で作られた人形に音楽が命を吹き込み、踊りだす様子は、芸術と音楽の力を表現した。

 聖火が消えた後、マラカナン競技場の中央に巨大な樹木が現れた。開会式でアスリートらが植えた「種」が長い年月をかけてはぐくまれたことを示したのか。その周りで繰り広げられるカーニバル。紛れもなくリオ五輪の終幕にふさわしい演出だった。