12年ロンドン五輪への重要なステップとなる陸上の世界選手権(8月、韓国・大邱)代表争いが、佳境に入っている。前半戦のヤマ場となる8日のセイコー・ゴールデンGP川崎(神奈川・等々力)にも、各種目の注目選手が集結。女子100メートルは昨年の広州アジア大会短距離2冠の福島千里(22=北海道ハイテクAC)が主役を張る。4月29日の織田記念国際の決勝は棄権したが、3日の静岡国際ですぐに軌道修正。万全の状態で川崎に乗り込む。

 今季、テーマに掲げる「楽しむ」の言葉が福島の精神的な成長を物語る。昨年6月の日本選手権女子200メートル(2位)でライバル高橋萌木子(富士通)に敗れた。記録への重圧に勝てずに涙を流した。精神的なふがいなさを払拭(ふっしょく)することが、今オフの課題の1つだった。「長く陸上をやっていきたいのに、昨年は楽しんで走れない時があった。もっと楽しみたい」と決意を話す。

 練習量を支えにした。一昨年から始めた肉体改造計画は2年目に厳しさを増した。4・5キロの重さのジャケットを着ての走り込みをメニューに加えた。ロープを天井からつるし、ぶら下がりながら体幹を鍛える「レッドコード」は1本から2本に増えた。練習のバリエーションも昨年までの約30種類から50種類以上に増え、肉体は飛躍的に強化された。昨年までは練習を重ねるとベスト体重50キロから大幅に減ることがあったが「どんなに負荷をかけても50キロを切ることはなくなった」と、指導する中村宏之監督(65)は話す。

 今季開幕戦の織田記念国際の女子100メートル決勝を左足ふくらはぎのけいれんで棄権したが、3日の静岡国際女子200メートルで圧勝し、すぐに軌道修正した。「走りだせば体が動くと思った。それだけの練習をしてきた」。今大会は個人の他、400メートルリレーで世界選手権の参加標準記録(44秒00)を破ることが目標。日本女子短距離陣が、今季力を入れている種目だ。「みんなで力を合わせてやっていきたい」。最速女王が陸上界をけん引していく。【松末守司】