桐生くん、心おきなく9秒台に挑戦しなさい-。陸上男子100メートルで10秒01のジュニア世界記録を持つ桐生祥秀(よしひで、17=京都・洛南高3年)に、記録達成のお膳立てがなされた。日本人初の9秒台に突入し、アジア記録として申請する際に必要な装置が、高校レベルの大会で用意されることが7日、分かった。特例措置を受け、まずは18日開幕の高校総体予選に臨む。

 シンデレラボーイとして脚光を浴びる桐生に、臨戦態勢が整えられた。日本人初の9秒台突入となれば、それが同時にアジア記録になることが特例措置に動く要因となった。アジア記録はナイジェリア出身のサミュエル・フランシス(カタール)が07年にマークした9秒99。桐生が9秒台をマークすれば、少なくともアジアタイ記録になる。

 このエリア別記録の公認要請は、世界記録の公認要請に準じ最低でも以下の3条件を満たす必要がある。

 (1)不正スタート発見装置と連結しているスターティング・ブロックの設置。

 (2)国際陸連が認めた超音波式風力計の設置。

 (3)国際陸連の公認検定員が検定したクラス2以上の競技場での実施。

 4月29日の達成直後から日本陸連は、前記3点をクリアすべく水面下で動いてきた。5日のセイコーGGP陸上(国立競技場)では(3)を満たすべく、直前にクラス2の検定を受け認可された(後日でも可能)。

 クリアすべき問題は、桐生が出場する高校レベルの大会。スターティング・ブロックは、アジアでも香港や日本などで数十台しかない希少なもの。人件費を含め1回のレンタルで数百万円かかるともいわれる。トップレベルならいざ知らず、ジュニアや地方大会で簡単には活用できない。

 そこで日本陸連は、桐生が所属する京都府高体連などと業者との橋渡しをし、地方大会で記録が出ても公認されるべく仲介役として動いた。「どこで記録を出すか分からなく、用意しなければ幻で終わる」と日本陸連関係者。費用分担などの問題は残るが「可能性のあるレース」として現状では18日開幕の高校総体京都府予選(京都・西京極)、6月13日開幕の近畿大会(奈良・鴻ノ池)、7月30日開幕の高校総体(大分銀行ドーム)で前述の3条件をクリアする舞台でレースを実施する。伊東浩司以来、6年ぶりのアジア記録保持者誕生に、後方支援は整った。【渡辺佳彦】