【メルボルン=吉松忠弘】予選から快進撃を続け、日米両方の国籍を持つ世界127位の大坂なおみ(18)をめぐって、日米の争奪戦が勃発した。ツアーでは、日本選手として転戦。本人も日本代表を希望しているが、米国テニス協会(USTA)が今大会の活躍で強力なアプローチを仕掛けているという。誰もが認める才能をめぐり、激しい綱引きが始まった。

 日米ともにのどから手が出るほどほしい逸材だ。関係者の誰もが「将来はトップ10間違いなし」と太鼓判を押す才能に、注目が集まる。大坂自身は「夢は日本代表で東京五輪に出たい」と話すが、米国サイドもついに触手を伸ばし始めた。

 古豪米国は世界女王のセリーナ、4大大会7度の優勝を誇るビーナスのウィリアムズ姉妹を除けば、スターが育っていない。USTAは、女子代表のフェルナンデス監督が大坂の父レオナルドさんに、すべての面倒を見ると約束したと伝えられる。全豪もUSTA関係者が大坂の試合をチェックしていたという。

 米国の接近にも現状で争奪戦は日本が大きくリードしている。13年9月に有明で開かれた東レ・パンパシフィックで、予選に出場していた大坂に日本テニス協会(JTA)が手を差し伸べた。

 今大会で大坂に同行する吉川真司代表コーチが「すごい才能」と報告。来日の度に、練習などの場を提供している。JTAの畔柳会長も「日本を代表する選手。全力でサポートする。彼女も日本を気に入っている」と説明。レオナルドさんも13年間、日本居住経験があり、無名の時から協力を惜しまなかったJTAに、恩義を感じている。

 日本には秘策もある。2月の女子国別対抗戦フェド杯アジアオセアニアゾーンで1位になれば、4月に世界グループ2部への入れ替え戦がある。その代表に大坂を選出することも視野に入れる。フェド杯は代表になると、次に別の国の代表になるのは困難。大坂は今大会、最も活躍した日本女子で世界ランクも4番目。代表は4人のため、障害はない。米国はトップ100に11人が名を連ねる。100位以下の大坂を代表に選ぶには、それなりの理由が必要となる。

 大坂がフェド杯の代表になれば、8月のリオデジャネイロ五輪出場の可能性もふくらむ。「どんどん希望がふくらむわ」と話すその目は、しっかりと日本を見すえている。

 ◆大坂なおみ(おおさか・なおみ)1997年(平9)10月16日、大阪市生まれ。3歳でテニスを始め、4歳で米国に移住。14年の米国ツアー大会で初めてツアー本戦に出場し、元全米覇者のストーサーを破った。父でコーチのレオナルドさんはハイチ出身の米国人で、母環(たまき)さんが日本人。日米の二重国籍。姉まりもプロテニス選手。180センチ、69キロ。

 ◆フェド杯代表と五輪代表の選考 ともに基本はその国のパスポートを保持することが条件だ。二重国籍でフェド杯の代表になった場合、次に異なった国から代表になるには、その3カ月前に、国際テニス連盟と、最初に代表となった国の協会が了承する必要がある。五輪の代表資格には、前回の五輪からの4年間で、フェド杯の代表に3回以上選ばれていることという規定がある。しかし、急激に世界ランクを上げ、五輪出場ランクに達した若手には除外項目があり、フェド杯代表規定は考慮される。

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