<陸上:全国高校総体>◇7月31日◇3日目◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場

 男子走り幅跳びで皆川澄人(白樺学園3年)が、陸上の道勢男子では初の連覇を果たした。5回目までは5位と表彰台圏外に沈んでいたが、最後の6回目で7メートル48の大ジャンプを披露。一気に上位をごぼう抜きした。昨年、ワンツーフィニッシュを飾ったチームメートの小西康道(3年)は6位に終わり、史上初の2年連続1、2位独占は夢に終わったが、王者の風格を感じさせる逆転劇だった。

 まさに“逆風”だった。追い風、昨年優勝からくるプレッシャー、予選で痛めた左ふくらはぎ…。5本目まで5位と本来の姿にほど遠かった。最後の6本目、スタートを待つ皆川の目に、“親友”小西の姿が写った。着地点から10メートル離れた場所に立ち「リラックス」と肩を回すポーズを取っていた。最後の跳躍を終え、表彰台を逃した小西が、悔しさを隠し、自分にエールを送ってくれている。うれしかった。「なぜかホッとした。力が沸いた。ここで勝たないと大学へ行っても世界にはつながらない」。覚悟を決めた。

 ゆっくりと走りだすと加速、着地までスピードが落ちなかった。「はまった」。砂が舞うなか、記録は分からない。それでも勝利を確信した。5回目までトップに立っていた長尾(斐太)の7メートル38を10センチ上回る7メートル48。「小西が笑っていたから…。勝った」。終わってみれば貫禄(かんろく)の逆転勝利だった。

 この大会に懸けてきた。今月、ポーランドで行われた世界ジュニア出場の打診もあったが「世界は大学へ入ってからでも遅くない」と辞退した。6月の南部忠平記念(函館)も予行演習にした。試合前も高校総体に合わせるため、記録は度外視し、ハードワークを課した。

 小西が疲労減退に効果があるという岩塩を会場に持ち込むと、2人で競技中になめた。道勢には不利な猛暑の熊谷を親友と戦い抜いた。小学5年、十勝地区の大会で初めて出会い、それから親友でありライバルの関係は続く。学校でも3年D組で同じくクラス。今大会も同部屋、普段もほとんどの時間を2人で過ごす。「負けたくなくて、ずっと続けてきたから…。小西のおかげです。ワンツーフィニッシュは大学に取っておきます」。皆川は最後まで感謝を忘れなかった。【上野耕太郎】