2000年シドニー五輪女子マラソン金メダルの高橋尚子(36=ファイテン)が「生涯ジョガー」を宣言した。28日、都内のホテルで会見し、現役引退を発表した。11月16日の東京国際から大阪国際(来年1月25日)名古屋国際(同3月8日)の3大マラソン出場を表明していたが、米国合宿で「プロ高橋の走りができなくなった」と感じ、第1線を退くことを決めた。今後は市民ランナーとして走り続けることを明言。知人に100キロマラソン挑戦を吐露した一方、来年3月8日の名古屋国際女子マラソンで、ジョガーとして参加する可能性も浮上した。

 高橋は、すがすがしい顔で引退を明らかにした。テレビカメラ24台、報道陣約180人が集まったホテルの会見場。「精神的にも肉体的にも以前のような走りができなくなった」と潔く言った。米国合宿中の7月以降、限界を感じ、悩んで眠れない日が続いた。8月末に「チームQ」のマネジャー、練習パートナー、トレーナー、調理師に心境を吐露。10月10日には、所属契約を結ぶファイテンの平田社長に打ち明け、結論を出した。しかし、走ることを一切やめてしまうわけではない。トップアスリートとしての競技に終止符を打ったが、引退後も走り続けることを明言した。

 高橋

 確実ではないのですが、(27位に終わった)3月の名古屋が最後になるのは悲しいので、ありがとうラン、さよならランができたらいい。陸上はずっと大好きでやってきましたので、ここで現役は引退しても、50になっても、60になっても、ジョガー高橋として走り続けていきたいなと思います。

 ファイテンとの契約は、来年5月末まで残る。チームQは解散しない。市民ランナーとはいえ、高橋が走る気になれば、サポート環境は万全。ファイテン関係者は「(来年の)名古屋には、ジョガーとして出るんじゃないかな」と話した。

 トップアスリートから引退し、市民ランナーだから挑戦できることもある。高橋は会見で「これを機に、自分のできることにチャレンジして、空いた時間に走って、ジョガーとして、東京、大阪、名古屋に連続して走れることがあったらチャレンジしたいです」とも言った。

 ジョガーなら、3大マラソン連続出場も珍しくない。高橋の知人に、マラソン完走約80回を誇る翔ひろ子さん(37)がいる。100キロマラソンの05年世界選手権女王の翔さんと4月に会った際「いつか絶対、100キロマラソンにチャレンジしたいんです」と話し、毎年6月に行われるサロマ湖100キロウルトラマラソンのエントリーなどに興味を示したという。

 高橋

 (次の目標は)具体的なことは何も決めていません。陸上を通じて多くの方から応援をいただいたので、陸上の楽しさを若い世代に伝えていきたい。この後の人生は、お返しをしていけたらいい。

 一線から退くが、日本陸上界64年ぶりの金メダリスト、国民栄誉賞受賞者、元世界記録保持者であることは、永遠に変わらない。速く走るために傾けた情熱は今後、走る楽しみや、陸上競技普及のためにささげられる。

 約52分間の会見を終え、席を立つと、報道陣から拍手が自然発生した。人前で泣かない高橋がこらえきれず、涙をあふれさせた。勝負師の目は、1人の女性の目になった。【佐々木一郎】