<フィギュアスケート:GPシリーズ第4戦・ロシア杯>◇最終日◇15日◇モスクワ

 ニューヒロインが誕生した。女子ショートプログラム(SP)2位の本郷理華(18=愛知みずほ大瑞穂高)が、フリーは118・15点で1位とし、178・00点の合計とともに自己ベストを更新。GPシリーズ参戦初年度、2戦目の初優勝で、同じく名古屋を拠点とする浅田真央、村上佳菜子に並ぶ快挙となった。

 オペラ「カルメン」のヒロインになりきった本郷が、ロシアのリンクで情熱的に舞った。片膝をつくフィニッシュで伸ばした右手を力強く握り、ガッツポーズ。「今持っているものを全て出し切れた。すごくうれしい」。GPデビュー戦だった2週間前のスケートカナダでの合計点の自己ベストを、7点近く上回る会心の出来。初のGP制覇が決まると「優勝しちゃった。本当に?」と感極まった。

 前日のSPでは、観客の手拍子も力に、ミスなく滑って僅差の2位。深めた自信をフリーにつなげた。「最初は緊張したが、(冒頭の)2連続3回転ジャンプで立てたので勢いがついた」。後半のトーループは回転不足となったが、高難度技を乗り切り勢いづいた。後半になるにつれて、前日のように会場を沸かせた。

 宮城県仙台市に生まれた。岩切小3年の時、同郷の荒川静香が06年トリノ五輪で金メダリストになった。同年3月の市内でのパレードでは、荒川の希望でオープンカーに同乗。7万3000人の市民の出迎えに手を振る女王に憧れ、五輪への思いを募らせた。

 直後に練習場所のリンクが閉鎖されたが、恩師の長久保コーチとともに名古屋に移り住んだ。荒川のようになるためだった。鈴木明子も育てた同コーチと母裕子さんと同居し、地道に技術を磨いてきた。その鈴木が引退し、浅田も休養中。フィギュアが盛んな名古屋を代表する選手が不在のなか、見事に躍進した。

 記者会見では、2人の穴を埋める自覚を問われ、「少しでも近づけるように練習をしている」と返した。他選手の成績次第では、上位6人が進むファイナル(12月、スペイン)出場もかなう。新たな「名古屋の星」が、18年平昌五輪に向けた主役争いに加わった。

 ◆本郷理華(ほんごう・りか)1996年(平8)9月6日、宮城県仙台市生まれ。港明中-愛知みずほ大瑞穂高。初出場した12年全日本選手権で5位に入り、注目を集める。13年全日本ジュニア選手権を初制覇し、今季シニアデビュー。8月のアジア杯でも優勝を飾った。特技はなわとび。166センチ、O型。