日本卓球協会は5日、過激派「イスラム国」による邦人人質殺害事件を受け、2月に中東で開催されるクウェート・オープン(11日開幕、クウェート市)とカタール・オープン(17日開幕、ドーハ)への選手派遣を中止すると発表した。外務省が中東での行動に注意を呼びかけるなど、現地の状況が不安視されるため。女子は1月の全日本選手権でシングルスなど3冠を達成した石川佳純や福原愛、男子は水谷隼ら計33人が出場予定だった。

 「イスラム国」による邦人人質殺害事件の余波がスポーツ界に及んだ。日本卓球協会は石川、福原ら監督、コーチを含めた男女53人の安全を優先し、国際卓球連盟が認定するワールドツアー2大会への選手の派遣中止を決めた。4月26日開幕の世界選手権(中国・蘇州)や16年リオデジャネイロ五輪に向けての強化や、世界ランクを上げるポイント獲得を狙う上で重要な大会。選手にとって派遣中止は痛手だが、安全には代えられないと判断した。

 事件の影響で、海外の大会に選手派遣を取りやめる競技団体は卓球が初めてとみられる。日本卓球協会は前日夜に協会幹部らが協議し、この日午前中に各チーム関係者に通告。反対意見などはなかったという。

 日本政府は、既に中東に関わりのある邦人の行動に対して注意喚起している。日本卓球協会もクウェート、カタールの両協会に日本選手団の安全に配慮してほしいと要請するなど、安全確保に向けて動いた。だが、事態は悪化。同協会は「その後発生した新たな事態に鑑み、種々の状況を検討した結果、選手団の派遣をとりやめるという決定をしました」と説明した。

 大会不参加の代わりに国内合宿などを実施する予定はなく、選手らは各チームで調整する。中東のバーレーンで7日まで開催されるジュニアサーキットに出場中の14歳の平野美宇が大会参加を継続するかは未定。欧州でのジュニアサーキットに出場中の選手は引き続き参戦する。【鎌田直秀】