日刊スポーツ評論家の里崎智也氏(48)と田村藤夫氏(65)による「ダブル解説~あなたはどっち派~」の2回目は日本ハム-西武戦(エスコンフィールド)からです。同じ試合を両氏がそれぞれの視点から解説します。
ロッテの同じ背番号「22」を背負った捕手出身の解説者として、異なる野球観から、勝敗の分岐点を探ります。
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【里崎智也氏の解説】
西武は27イニングぶりの得点で勝った。勝利してなお、打てない理由を突き詰めて考えてほしい。そう言わずにいられない。長谷川の打席を具体的に解説する。
2回2死一、二塁での第2打席。真っすぐ2球を見逃してカウント1-1。そこからカットとフォークを打っていずれもファウル。タイミングはそこそこ合っていた。最後は内角真っすぐを見逃し三振。
これで捕手伏見は、真っすぐへの反応は薄く、変化球に比重があったと判断したはずだ。第3打席は4回1死二塁。第2打席の流れから伏見は、今度は長谷川は真っすぐは見逃したくないはず、と考えたのではないか。
まずカットボールから入る。これを内角を意識したかのような引っ張るスイングで空振り。2球目もカットを続けファウル。だが、2球続けた後の真っすぐはあまりに安直。フォークをはさみカウント1-2から、外のカットで中飛に打ち取った。伏見は各打席のつながりを大切に、横軸で攻める。一方の長谷川は後手後手に回っている印象だ。
第2打席は真っすぐに反応できず、第3打席は前打席の残像が強くて変化球に対応できなかった。
では6回2死三塁の第4打席、伏見はどう考えたのか。初球フォークから入り様子を見る。ファウルのスイングから変化球への比重を感じつつ、2球目は真っすぐを選択。ただし、外角で長谷川の反応を探る。逆球で中に入ったが、やや振り遅れたスイングで一塁側へのファウル。
このスイングから、やはり変化球への意識が高いと判断し、3球目は外角いっぱいの真っすぐ。ギリギリボールと判定も、意識づけするには効果的な1球に。最後はカットボールでタイミングを外し、難なく投ゴロに仕留めた。
各打席でのタイミングの取り方、腰の開き、全体の反応を見て、伏見はほぼパーフェクトに封じた。配球とは結果から逆算して評価される宿命を持つが、横軸を踏まえて解説すると、残念だが長谷川の心理はかなり詳細に想像することが容易だ。
私は西武からロッテに移籍してきた原井和也さんに言われたことがある。「里、伊原監督がこう言ってた。『来ない球を一生待っていても一生打てないぞ』と」。私は原井さんの言葉を聞いた2003年、それまでの打率0割4分3厘から、3割1分9厘になった。そこは付け加えたい。
打席で狙い球を絞ることは大切だが、自分の反応をもとに相手バッテリーは考える。自分の狙いを外そうと布石を打たれるのだから、相手にどう思われ、どう攻略されるのか、考えなければならない。
独り善がりのバッティングには限界がある。相手の思惑を読むこと、捕手の狙いを考えること。それが西武打線でチャンスを与えられている若手に足りない部分だ。原井さんの言葉を、西武の若き打者に贈りたい。(日刊スポーツ評論家)
【田村藤夫氏の解説】
勝因を探るために見入った試合だったが、心に残ったのは伏見であり古賀悠だったのは、捕手としての習性なのかもしれない。
好対照な先発投手の出来だった。隅田はストライク先行で常に先手を奪い、球威を前面に出しつつ変化球のキレもさえた。ほぼ満点だろう。
金村は苦しかった。初回、渡部聖に初球カーブを痛打され、引き出しがひとつ減った感があった。緩急をつけるのにあの緩いカーブは効果的も、2回にも古賀悠にしっかり待たれてスイングされ、使いづらくなったのだろう。
素晴らしい出来の隅田と苦しい金村。捕手ならば、もちろん調子のいい隅田と組みたい。そして矛盾するが、捕手ならばこの日の金村を何とか引っ張って試合を作りたい、そう思えてしまう。
伏見は右打者に対し、バッティングカウントでの内角真っすぐの使い方が光った。5回2死、外崎に対し1-1からの3球目、そして続くセデーニョには、1-0からの2球目、いずれも厳しく内角を攻めて見逃しを奪った。
長打の確率が高い内角真っすぐは使い方が難しい。そこまでの打席を踏まえた伏見の技量だ。外崎、セデーニョに対し、そこまではフォーク、カットを中心に攻めた。3巡目に入り、意表をつくかのように、バッティングカウントで使ったところに視野の広さを感じた。2回の長谷川はバッティングカウントではなかったが、1-2から内角真っすぐで見逃し三振。苦しむ金村を助けた。
比べる意図はなかったが、古賀悠には違う意味で意表をつかれた。6回1死。万波に3-0から、4球目を内角に構えた。私は見ていて「ウソだろ!」と驚かされた。結果、内角真っすぐで中飛。結果アウトは奪ったが、ここはよく考えてほしい。
両チーム無得点で、長打警戒の万波に、3ボールから内角真っすぐは危険だ。真っすぐを選択した根拠があるなら外角でいい。隅田の球威が勝ったのだが、打ち損じと、打ち取ったは雲泥の差だ。
図らずも右打者に対し、伏見が奪った2つの内角真っすぐでの見逃しと、古賀悠がリードし万波が打ち損じた中飛は、いろんな意味で中身が異なる。とても強く印象に残った。
勝ったのは西武だが、私は苦しむ金村を苦心しながら6回まで無失点に引っ張った伏見のリードに感じ入った。(日刊スポーツ評論家)




