朝から大きな声を張り上げてノックを受ける。阪神の沖縄・宜野座キャンプでは連日のように、高山ら外野手がサードの位置で特守だ。一見、ゴロのさばき方を習得する練習に見えるが、意図はそれだけではない。

 ノッカーを務める中村豊外野守備走塁コーチは「(内野の)身のこなしを覚えるため。外野を守るだけでは、分からないこともたくさんあるからね」と説明する。内野手の気持ちになって、内野手の動きをすることで見えてくるものもある。確かに、グラブも外野手用ではなく、内野手用を使用している選手が多い。

 全体練習後ではなく、朝から特守を行う理由については「タイガースは(ファンも含めた)みんなに見られないと成長できないからね。だから(特守をやるのは)みんなが注目してくれる時間なんです」。なるほど、若虎たちがプレッシャーの中で本領を発揮する源は、キャンプの中にもあった。あえてファンの前でゲキを飛ばす中村コーチのノックには、愛情が込められていた。【阪神担当=真柴健】