プロ野球は21日、オープン戦全日程が終了。25日の開幕戦へカウントダウンが始まった。野球評論家の西本聖氏(59)に今季の注目ポイントの一つ、コリジョン(衝突)ルールについて聞いた。

 -導入が決まったコリジョンルールについて

 西本氏 間違いなく野球が変わると思います。これまでアウトだった本塁でのクロスプレーが100%近くセーフになるからです。

 -具体的には

 西本氏 無死、または1死で三塁に走者がいる場合、内野ゴロで得点が入りやすくなります。捕手はブロックできません。ホームベースの一角を空けないといけないので、どうしても追いタッチの形になる。逆を言えば内野手は今まで以上に正確なスローイングが要求されるわけで、かなりのプレッシャーがかかると思います。

 -そこで各球団は「超前進守備」などの対策を立てている

 西本氏 前進守備というのはリスクを伴う。内野手が前に出ればヒットゾーンが広くなるし、外野手の場合、頭を越され長打になる危険が非常に高くなります。

 -1点は仕方がないという判断も必要になる

 西本氏 今まで以上に監督やベンチの采配が重要になります。例えば1死または無死二、三塁。大量リードの場合は前進守備は敷きませんが、接戦の場合は前進してバックホームのシフトを取る。しかし、これからは1点を覚悟して後ろに守ることも必要になると思います。二、三塁で内野ゴロをバックホーム。これまでアウトに出来たものがコリジョンルールによってセーフになってしまう。フィルダースチョイス(野選)でさらに一、三塁に走者が残ってしまいます。こうなると大量失点の危険性もあるわけです。1点を失ってもいいから確実にアウト数を稼ぐ。ビッグイニングのリスクを避けてアウトを増やした方が賢明だと思いますね。そこはベンチの判断になります。得点差、イニング、相手の打順、自軍投手の調子など。監督の采配が勝敗を分けるゲームが増えてくると思います。

 -プレーヤーにはどんな変化が起こるか

 西本氏 打者はプレッシャーが減るでしょうね。三塁にランナーがいたら最低でも外野フライを打たなきゃいけないというのが、内野ゴロでも良くなる。一方、投手は難しい。低め、低めを突いて内野ゴロを打たせても1点取られてしまう。三振か内野フライに打ち取りたければ配球も変わってくるでしょうね。

 -ファンに影響は

 西本氏 外野手の最高のプレーが消える可能性があります。「外野フライを捕ってバックホーム。レーザービームで本塁タッチアウト」という場面がほとんどなくなるかもしれません。野球の醍醐味の一つなんですけどね。

 -個人的にコリジョンルールには違和感?

 西本氏 2月にキャンプを視察した時に、ある球団の主力捕手と話す機会がありました。「(捕手に)みえみえのタックルをしてくるのは一部の外国人選手だけ」とその捕手は言っていました。要はタックルする選手が一番ダメなわけで、そんな選手は一発退場にすればいい。それが一番だと私は思います。ボールが来たと同時にブロックするのは認めて欲しかったですね。ただ大リーグでも適用されていますし、日本でも選手会の意見も聞いて導入を決めたルールだと聞いています。決まったからにはしっかりと対応する必要があると思います。

 【コリジョンルールとは】

 今季から本塁での危険な衝突を避けるための規定が、公認野球規則に追加される。「得点しようとしている走者は最初から捕手に接触しようとして(中略)走路から外れることはできない…」「捕手がボールを持たずに得点しようとしている走者の走路をブロックすることはできない。もし捕手がボールを持たずに走者の走路をブロックしたと審判員が判断した場合、審判員はその走者にセーフを宣告する」などが明記される。リプレー映像の使用を、本塁上でのクロスプレーでも適用する。