東海大北海道(札幌学生)が岐阜経大(東海地区)を4-2で下し、初の4強入りを決めた。「両手投げ」登録の武沢龍矢投手(4年=東京成徳大深谷)が先発し、右投げで6回6安打2失点と踏ん張り、全国大会初登板初勝利を挙げた。北海道勢のベスト4は、74年の札幌大以来43年ぶり。明日10日の準決勝第2試合で、道勢初の決勝進出をかけて立大(東京6大学)と対戦する。

 異色の両手投げが歴史の扉をこじ開けた。武沢が力いっぱい右腕を振り下ろした。打線が初回に4点を挙げて迎えた神宮初登板。「昨日眠りは浅かったけど、調子がよいと感じた」。130キロ台後半の直球とスライダー、ツーシームを駆使し、初回の全打者を内野ゴロで3者凡退に抑え、リズムをつかんだ。6回6安打も要所を締め、初の4強を引き寄せた。

 登録は「両手投げ」。小学4年のとき右肘を剥離骨折した。「右手をケガして何もやることなかった」と、当時好きだった漫画「MAJOR」の主人公にあこがれ左腕に挑戦した。中学では熊谷シニアの元西武で猪爪義治監督の勧めで、6本指のグラブを特注した。普段は右利きだが、食事のときに左手で箸を使うなど、生活から左手を意識した。中学、高校では打撃練習や練習試合で、右打者に右投げ、左打者に左投げを披露するまでになった。

 父智章さん(51)は「左手の練習が、左打者としての素質も向上させた」という。そのため投手力よりも打撃を買われた。それでも投手への思いを断ち切れず、大学進学は投手で両投げに挑戦できる環境を求め津軽海峡を渡った。練習試合では左投げで登板することもあったが、2年から高橋葉一監督(51)には「右で一人前になるまで専念すること」と厳命された。今春のリーグ戦で初めてベンチ入りすると、計3試合で8回1/3を1失点と結果を出し、神宮のマウンドをつかんだ。また両手投げでの公式戦登板も視野に入れ、左での投球練習も続けている。

 高橋監督は「(相手の試合の)映像を見て、武沢に決めた。相手が嫌がるんじゃないかなと思った」と前日に先発を言い渡した。期待に応え全国初勝利をつかんだ武沢は「この代は弱いと言い続けられてきた悔しさがあった。勝ててうれしい」。明日10日は道勢初の決勝進出をかけて立大と対決する。「投げられたら、次も全力で投げる」。スイッチ投手がさらに歴史を塗り替えるつもりだ。【浅水友輝】