初めて準決勝に進出した東海大北海道(札幌学生)は、立大(東京6大学)に0-1で敗れた。立大打線を2安打に抑えたものの、初回の3失策による1失点が最後まで重くのしかかった。北海道勢初の決勝進出は逃したが、昨年全国8強時の主力が抜けて弱小と言われた世代が、主将の中西郁人三塁手(4年=東海大四)を中心に初の4強と快進撃。新たな歴史をつくった最強世代が、秋のリベンジを誓った。

 大粒の涙がほおを伝った。「チームに迷惑をかけた。自分のミスがなければ…」。中西は振り絞るように声をつむいだ。初回1死二塁、相手3番打者のゆるい三ゴロを一塁に悪送球。自身のミスで広げたピンチ。死球で満塁となり、今度は5番打者のゴロをグラブではじいて先制点を献上。これが勝負を決める大きな1点となった。

 昨年のエース水野滉也(現DeNA)主砲の伊藤諄(現日本通運)が抜け、弱小と言われたチームをここまで引っ張ったのも中西だった。「チーム一丸」が求められる中、冬場のランニングなどつらい練習をさぼる選手もいた。人生初の主将に悩む中西は、知人から紹介された「嫌われる勇気」を読んで意識を変えた。

 「嫌われることを恐れず、チーム1人1人と話した」と中西。さぼる選手に1日中、雪はねをさせたこともあった。春季リーグで3敗目をした時点で「今年は2部に落ちるのでは」とまでささやかれた。それでも「言いたいことが言えるようになった」と、中西を中心にチームがじっくり話し合い、基本を徹底することでリーグ戦を突破した。

 弱小からはい上がった世代が、初の4強で歴史を塗り替えた。高橋葉一監督(51)は「負けて悔いなしという試合はないが、負けるときはこんなもの。このチームは最初『優勝できるのか?』と疑問符がついた。でも1戦1戦成長してくれた」とたたえた。初戦の東洋大を皮切りに、下馬評を覆し次々と強豪校を撃破。ナインは「名門校や強豪校だと燃える」と口をそろえた。

 東海大北海道は春季終了後に主将交代するため、中西も秋に向けては一選手として臨む。「弱いと言われながらも、初めてのベスト4。ここまで来れる力はある。秋は絶対に神宮に戻ってきてリベンジしたい」。視線はすでに先を見据えていた。【浅水友輝】