優勝貢献で東北に恩返しだ。阪神ドラフト1位の仙台大・馬場皐輔投手(22)が9日、仙台市内で入団交渉に臨み、契約金1億円プラス出来高5000万円、年俸1500万円で仮契約を結んだ。宮城・塩釜市出身で、中3の11年に東日本大震災で被災。避難所生活を送り、ボランティアに携わった経験を持つ。まずは、来年6月に仙台で行われる楽天3連戦での里帰り登板が目標。復興半ばの故郷に明るい話題を届け、金本阪神を優勝へ導く活躍を誓った。(金額は推定)

 

 馬場の言葉に特別な力がこもった。プロでの目標。それは東北への恩返しだ。

 馬場 宮城県出身ですし、地元の方たちにも応援していただきたい。しっかり頑張っていかないといけない気持ちがあります。

 自宅は仙台近郊の沿岸部、塩釜市にある。6年前の塩釜三中3年生の時、東日本大震災で被災した。11年3月11日。卒業式の日だった。式を終えて帰宅したが、震災の影響で中学校に緊急避難。卒業したはずが、数時間で体育館に戻り、避難生活を余儀なくされた。

 幸い、馬場や家族に大きなケガはなかった。後に確認に出向くと、自宅も残っていた。だが、友人宅が津波にのみ込まれるなど、野球ができる状況ではなかった。さいなまれる絶望感…。だが自分を育ててくれた町をなんとかしたい一心で、塩釜市のボランティアに参加する日々を送った。

 故郷を東北を少しでも元気にしたい。仙台育英、仙台大と進学してからも、思いは変わらなかった。もちろんプロでも同じだ。阪神は来年6月15日からコボスタ宮城で楽天と3試合を戦う。里帰り登板での快投がモチベーションになる。「そこで投げれたらいいかなと思います。1軍で登板できるように練習しないと」。内定しているキャンプ1軍、さらに開幕1軍で結果を出し続け、仙台のマウンドを勝ち取る意気込みだ。

 この日は仙台市内のホテルで入団交渉に臨み、阪神と仮契約を結んだ。契約金1億円プラス出来高、年俸1500万。新人の最高待遇で迎えられ、晴れてタテジマの一員となった。かぶとと刀を手に、仙台のヒーロー伊達政宗に扮(ふん)した右腕は、力強く“セ界統一”を誓った。

 馬場 (プロは)厳しい世界で、甘くないと思う。覚悟と強い気持ちをつくらないといけない。でも阪神タイガースに入った以上、優勝に貢献しないといけないと思っている。勝ちに貢献できる選手になりたい。

 今、野球が出来る喜びを感じずにはいられない。最速155キロの真っすぐを武器に、強い信念で打者に立ち向かう。甲子園から塩釜、仙台、東北を思い腕を振る。180センチ、90キロ。スケールも夢もジャイアントな馬場が、復興半ばの故郷に希望を届ける。【真柴健】

<馬場皐輔(ばば・こうすけ)アラカルト>

 ◆生まれ 1995年(平7)5月18日、宮城県塩釜市出身。

 ◆球歴 塩釜三小から野球を始め、塩釜三中では七ケ浜シニアに所属。

 ◆甲子園 仙台育英では入学当初、打撃投手。2年秋からベンチ入りし、2度甲子園に出場。13年春にセンバツ8強、夏は3回戦に進出した。

 ◆みちのくの怪腕 仙台大では1年春から公式戦登板し、リーグ通算15勝5敗。大学4年の今秋は先発5試合で37回を投げ2失点。36回無失点など防御率0.49。60三振を奪い、奪三振率は驚異の14.59。

 ◆持ち球 直球の最速は155キロ。変化球はカーブ、縦横2種類のスライダー、カットボール、フォーク、スプリット、チェンジアップの7種類で、得意球は縦横2種類のスライダー。

 ◆サイズ・タイプ 180センチ、90キロ。右投げ右打ち。足のサイズは29センチ。

 ◆好きな芸能人 小籔千豊。「トークがおもしろい。ツボに入って笑ってしまう」。YouTubeで何度も見るほどファン。

 ◆家族 両親と妹2人。