ソフトバンク上林誠知外野手(23)が、価値ある日本シリーズ第1号を放った。3回2死一塁、右翼へ先制2ラン。試合の流れを一気に引き寄せた。王球団会長も認めるそのパワーを、ともに自主トレを行う「兄弟子」広島鈴木の前で見せつけた。若き大砲に導かれ、チームは大きな1勝を挙げた。

度肝を抜く打球が鷹ファンの元に飛び込んだ。3回2死一塁。上林は広島野村の変化球を右翼席上段まで運んだ。先制2ランは自身の日本シリーズ初本塁打。「楽勝で(スタンドに)行くと思いました。うれしい。本拠地に来たら打てる気がしていた」と喜んだ。

ブレークした昨年はCSファイナルステージ途中でメンバー落ち。シリーズは代打1打席で三振と、何もできなかった。今季のファイナルSでは全試合に出場し、史上最多タイの10打点をマークする活躍。最終第5戦の前には「普通の試合と同じ気持ちでやれているのが大きい。(MVPを)狙えるのなら、狙いたいですね」と話すほど余裕を持ってプレーしていた。今シリーズは体調を崩した影響もあり、初戦で6打数無安打。第2戦は先発を外れた。「昨日(30日)が開幕だと思ってやった」と気持ちを切り替え、ホームに戻った第3戦で初安打。今季143試合に出てつかんだ、不調を引きずらない引き出しが生きた。

右翼の守備位置から見つめるのは、広島鈴木の打撃だ。オフには師匠の内川とともに自主トレする「兄弟子」。年齢も1歳違いで、ライバルとして切磋琢磨(せっさたくま)する仲だ。鈴木は前日30日の第3戦で2打席連続本塁打。上林は「体がやばい。でかくなっている。(鈴木の)おやじさんに似てきましたね。会ったことはないですが、テレビで見たことがあります」と独特の表現でたたえた。この日も上林の先制弾直後に、鈴木が2戦連発のソロで反撃。「あの人は打ちまくる。打ち負けられないと思ったら、今日も打ちやがった。まだまだ実力は及びませんが、ポジションも背番号も一緒。セ・リーグで一番意識している」。好敵手の活躍も刺激に、主力として日本一をつかむ。【山本大地】