今秋ドラフト候補の八戸学院大(青森)最速150キロ右腕・大道温貴投手(4年=春日部共栄)が、リーグタイ記録となる18奪三振をマークした。

全勝の富士大(岩手)相手に初回に1失点し、0-1で敗れはしたが、14年春に富士大・多和田真三郎投手(現西武)が樹立した大記録に肩を並べる快投。日本ハム、巨人など、プロ6球団のスカウトが視察する中、直球やスライダーなどで9回まで躍動する姿は存在感が際立った。

   ◇   ◇   ◇   ◇

9回表、最後もスライダーと高めの直球で2者連続三振で締めた。だが、ベンチに戻る表情に笑顔はない。9回裏のベンチでも逆転を期す仲間に声を送り続けた。「ピッチングの内容で勝っても、エースとして勝負に負けたら、うれしくない。18奪三振というリーグ記録に名前は残せたけれど、素直に喜べない」。全勝を続ける相手に敗れ、今季2敗目を喫した悔しさに「明日以降も全部勝つために何をするかしか考えられない」とバスに乗り込んだ。

1回表にいきなり安打を許し、犠打で1死三塁。追い込んでからの直球を中前に運ばれて先制を許したのが最大の後悔だった。「途中ですっと力が抜けて、これで良いんだなと気づけた」。力みが消えて、自己最速にあと1キロに迫る149キロをマークし、躍動感ある投球に拍車がかかった。2度の5者連続を含む毎回の18奪三振。ロッテ柳沼強スカウト(46)は「最後まで強く腕を振れることが大事。体も強いから9回まで(投球内容が)落ちない」と高評価した。

正村公弘監督(57)も「エースなんだから先に点を与えちゃいけない。どんなに良い投球をしても勝たなきゃ意味がない。良く投げてくれているんだけれどね」と大きな期待を寄せる。昨春以来の優勝に挑む同大にとって、負けられない戦いが続く。大道も「まずは明日(富士大戦)、中道にも頑張ってもらって、すべて勝つしかない。整列の時に相手に『大道を打ったぜ~』って言われて、めちゃくちゃ悔しかった」。大記録を樹立した自信と屈辱を胸に巻き返す。【鎌田直秀】