失策王も上等だ!プロ野球は2日間の球宴を終え、東京五輪に伴う公式戦中断期間に突入した。

阪神ドラフト6位の中野拓夢内野手(25)がインタビューに応じ、遊撃の定位置を獲得した前半戦を振り返った。両リーグ最多の13失策ながら、ミスを恐れない「攻めの守備」を後半戦も貫くと強調。同期の佐藤輝明内野手(22)に負けない存在感を放つルーキーが、8月13日のリーグ戦再開までレベルアップを目指す。

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周囲だけでなく自身の想像も上回った。前半戦は84試合のうち66試合に先発出場し、打率2割7分8厘。16盗塁は阪神近本、ヤクルト塩見に1差のリーグ3位だ。

「個人としては『出来すぎている』というのが一番の印象。バッティングと盗塁の面ですね」

6月25日DeNA戦から3日広島戦まで自己ワーストの24打席無安打が続いた。先輩の言葉に救われたという。

「近本さんに『自分のスイングをすることが一番大事』って言われたので。ボールに合わせてバットを出すより、自分のスイングをした中でボールを捉える。そこを考えてからは捉え方が良くなった」

3年目の先輩の助言は効果抜群だった。前半戦ラストは阪神新人で6人目の10戦連続安打。11戦連続まで伸ばしフィニッシュした。

打撃同様、守備でもミスを挽回できる勝負根性とセンスを備える。13失策は12球団トップ。6月1日オリックス戦では、自らの失策が絡んで決勝点を献上。矢野監督から「あいつがここから悔しさをどうするか」とゲキを飛ばされた。求められるのはミスを恐れない攻めの姿勢。指揮官と中野の思考は一致する。

「ミスした次の試合が一番大事。ずっとレギュラーで出るためには取り返すようなプレーが大事。帰って頭を整理して、次の日に向けて切り替えはうまく出来ている」

“失策王”も上等。そんなマインドだから、ビッグプレーも生まれる。ファンの度肝を抜いたのはプロ初スタメンの4月10日DeNA戦。1点リードの7回2死一、三塁。戸柱の鋭いライナーが二遊間へ飛んだ。抜けていれば同点は免れなかったが、次の瞬間、打球は二塁ベース寄りに守っていた中野のグラブに収まった。なぜ、そこにいる-。

「引いて守ることは嫌。見ている方も攻めたプレーの方が『しょうがないな』って気持ちにもなる。自分も攻めたプレーだったら割り切れるって考えはあるので、これからも攻めた守備をやっていきたい」

ともに1軍で戦う佐藤輝に刺激を受ける。「いい意味で自分を持ってる。人に流されない」と分析。好影響を与えてくれる存在だ。

「自分のペースで自分も行動できている。佐藤選手がゆっくりな分、自分もゆっくりな行動を取れるって、いい意味で捉えてます」

そんな同期ドラ1と争う新人王。タイトルには「そこまで強い気持ちはない…視野に入れながら」と控えめだが、力強く続けた。

「一番はチームが勝つこと。自分の役割をしっかりすることで結果がついてくる。チームの勝利を優先に考えてやっていきたい」

球宴では2試合とも出場。ようやく五輪ブレーク期間でひと休み…と思いきや「(後半戦は)バッティング面では3割を目標に。盗塁は30盗塁したい。課題が多いので克服できるような期間に」と練習に励むつもりだ。その先、秋にはさらに想像以上の結果が待っている。【中野椋】

 

○…グラウンドを離れれば、いたって普通の25歳の好青年だ。佐藤輝とは他愛のない話で盛り上がる。「たまに自分がももクロの話題を…あんまり詳しくないけど」。モモノフの仲間には「なってないです」と笑顔で否定した。寮では「アマゾンプライムのドキュメンタルを見て1人で笑ってます。くっきー! であったりザコシショウだったり、面白いなと」とお笑い番組でストレス発散する。食事面は体重キープのため「間食を入れたりとか工夫はしてます」。笑いも食事もしっかり補給し長いシーズンを乗り切る。

 

◆中野の好守 4月30日広島戦の2回。松山の三邪飛を捕球後フェンスにぶつかるもボールを離さなかった。4回には西川の二塁ベース右の打球をダッシュよく好捕。前日の失策から挽回した。7月3日広島戦では5回無死一、三塁で二塁ベース付近のゴロをさばくと、二塁ベースを踏み1アウト。そのまま一塁送球で併殺が定石で1点はやむなしと思われたが、瞬時の判断で本塁へ送球して三塁走者を間一髪でアウトにした。俊足を生かした広い守備範囲と好判断が光った。