巨人阿部慎之助監督(45)が「日刊スポーツ×ニッポン放送ショウアップナイター」スペシャルインタビューに応じた。首位広島を1ゲーム差で追い、優勝争いを繰り広げる中で、聞き手の谷繁元信氏(53=日刊スポーツ評論家)と捕手ならではの目線で鋭いトークを展開。ベテラン菅野の復活、2年目浅野の台頭、試合後の厳しいコメントの真意などを語った。【取材・構成=為田聡史】
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谷繁 ここまでのペナントレースは、思い通りに進んでいますか。
阿部監督 想定以上ですね。
谷繁 まじですか。うまくいってる部分と、うまくいってない部分があると思うんですね。その中でうまくいってる部分というのはどういうところですか。
阿部監督 やっぱり、先発陣が誰もここまで長期離脱をしていないというところですね。
谷繁 その中で、ちょっと個人的に菅野が復活というか、良くなりましたね。
阿部監督 真っすぐが良くなったのかなっていうのは見てるんですけどね。球速も150キロまで出ますし。縦振りっていうか、ちょっと投げ下ろすイメージを出してから、全てが良くなったのかなと。
谷繁 僕は見てて、今まではどうしてもストレートとスライダー主体みたいな感じが、いろんなボールを使いながら、技術が上がったと感じるんですけど。
阿部監督 もともと変化球を操るのはうまいんですけど、その技術が1歩上がったなというのは感じます。フォークも空振りを結構、とれますし。あと、スライダーもちょっと縦割りのカーブみたいな。ああいうのをうまく使えて、投球の幅が広がったんじゃないかなっていうのはありますね。
谷繁 試合後のコメントで選手に苦言っていうか、ちょっと選手に対してメディアの方に言う時あるじゃないですか。あれは何か意図的にやられてるんですか。
阿部監督 意図的にやる時もありますし、言いたいけど言わないで、そっとしておくっていう時も。そっちの方が多いですね。
谷繁 もっと言いたいことは。
阿部監督 そうですね。今ね、岡田さんもちょっと激しくなってますしね(笑い)。
谷繁 気持ちはすごくわかる。僕もちょっとだけ経験したんで(笑い)。
阿部監督 やっぱり、指摘はしないといけないと思うんですけど、それをしたとこで…という話も出てきてしまう。もう、ペナントレース終盤ですし、優勝経験がある人はたくさんいる。その人たちで、奮起してもらえれば一番ありがたい。その中で浅野だったりとか、今ずっと我慢して使ってるんですけど、そういうのを教えてもらったり、感じたりしてもらいたいなと期待を込めて使っています。
谷繁 監督がメディアの前で選手の名前を出した時に、その選手の反応っていうのはどうですか。
阿部監督 見ないですね。次の日は、なかったかのように「おはようございます」って言うようにしています。
谷繁 今年一番、腹が立ったことは。
阿部監督 井上が1球、抜いて投げた時ですかね。
谷繁 横浜スタジアム。で杉内コーチにマウンドに行ってこいと。あれはどういうシーンだったんですか。
阿部監督 あれは多分、アウトコースに1球ボール球要求だったと思います。それをフワッと投げたんで「この野郎!」と思って。やっぱり、ああいうのって、力を抜かずにパーンってボールにするのと抜いて投げるのでは打者への印象が違う。抜いて投げても意味がない。そういうのが見えてしまったんで。
谷繁 ジャイアンツのピンチでしたからね。
阿部監督 そうですね。だからこそカチンときました。あの1球が。
谷繁 次の球はインサイドに思いっきり投げて、詰まらせてアウトをとりましたよね。覚えてます。
阿部監督 それが一番、腹が立ったことですね。
谷繁 ほかにも、まあまあ腹が立つというか、イラっとする時ってあるじゃないですか。そういうときはどうやって自分の中で抑えていますか。
阿部 手帳に書いて沈めます。
谷繁 書き物ですね。じゃあ、その書き物の中には腹が立ったことがいっぱい書いてあるかもしれないですね。これは見せられないですね(笑い)
阿部監督 公には出せない言葉もたくさん書いてあります。まあ人に見せるものではなく、自分のものなので。
谷繁 さあ、最後に優勝に向けてこっそり秘策を教えてください。
阿部監督 秘策はないです。もう、なるようにしかなんないので。とにかく毎日、1試合1試合という気持ちでできるかどうかだけだと思う。細かいことを言ってもどうしようもない。いつも言っているのは「状況判断と空気読めよ」ということだけ。あとは思い切って、失敗を恐れないでやってほしいなと思います。
谷繁 あとはけが人ですね。
阿部監督 そうですね。ヘルナンデスがけがしてしまったので、ここからさらにもう1人となるとちょっと痛いです。ヘルナンデスの代わりに浅野が今、頑張ってますけど、もう1人ぐらいファームから出てきてくれたらうれしいですね。
◆7月27日DeNA戦(横浜)。巨人先発の井上は3回2死一、三塁で佐野への初球、140キロ直球を外角に外した。阿部監督は杉内投手チーフコーチの袖を引っ張って呼び寄せ「初球、明らかに抜いているように見えたからね。『10年早い』って言ってこいって」と伝えた。スイッチの入った左腕は6回1失点で4勝目。チームは貯金10に。
◆阿部慎之助(あべ・しんのすけ)1979年(昭54)3月20日生まれ、千葉県浦安市出身。安田学園-中大を経て、00年ドラフト1位で巨人入団。04年4月に当時の日本記録に並ぶ月間16本塁打。09年日本シリーズMVP。12年は首位打者、打点王、最高出塁率に輝き、MVP、正力松太郎賞。17年に通算2000安打。19年現役引退。通算2282試合、2132安打、406本塁打、1285打点、打率2割8分4厘。ベストナイン9度、ゴールデングラブ賞4度。20年から2軍監督。22年から1軍コーチを務め、今季1軍監督に就任。右投げ左打ち。
◆谷繁元信(たにしげ・もとのぶ)1970年(昭45)12月21日、広島県生まれ。江の川から88年ドラフト1位で大洋入団。98年にチームの38年ぶり日本一に貢献。01年オフにFAで中日に移籍し、リーグ優勝4度、07年日本一。13年に通算2000安打。14年から選手兼任監督。15年の引退までプロ野球記録の3021試合に出場。27年連続本塁打、捕手で2963試合出場はギネス記録。通算2108安打、229本塁打、1040打点、打率2割4分。ベストナイン1度、ゴールデングラブ賞6度。16年から監督専任もシーズン途中で解任。現在は日刊スポーツ評論家。右投げ右打ち。



