二等床山の床秀(48=式秀)が、横綱2人のマゲを結っている。本場所での豊昇龍の大銀杏(おおいちょう)を担当してきた特等床山の床辰が昨年12月に定年退職。これを受け、床秀が豊昇龍の大銀杏を結う後継者に指名された。
今場所から大役を務める床秀は「初日に支度部屋の一番奥にいざ立つと景色が違いました。その緊張感はすごい。床山として31年目に入りますが、初日は緊張しました。横綱をやる責任感を感じた瞬間でしたね」と神妙に言った。
大役を引き受けるにあたり、昨年9月の秋場所と11月の九州場所は、床辰の仕事ぶりを直接観察し、目に焼き付けた。横綱の雰囲気やリズムに慣れるための時間でもあった。「床辰さんからはアドバイスもいただいて、感謝しています」。昨年10月の百周年場所や、年始の明治神宮での奉納土俵入りでも豊昇龍の大銀杏を作り、初場所に備えてきた。
「普段はやさしい横綱ですが、本場所になると近寄りがたい緊張感を肌で感じます。横綱は誰よりお客さんに見られます。横綱土俵入りはずっと1人が見られる。下手な大銀杏はできません」
床秀が所属する式秀部屋は、茨城県龍ケ崎市にある。立浪部屋が茨城県つくばみらい市にあったころ、床辰がケガをした時など、立浪部屋に通って力士のマゲを結った時期があった。明生、豊昇龍、天空海らが十両の優勝決定戦を戦ったころだった。この縁があって立浪部屋とのつながりがあり、誠実な人柄、確かな腕が見込まれた。床辰からかねて「何かあったら頼む」と言われていた通り、定年をきっかけに仕事を受け継いだ。
本場所でない時期は、式秀部屋の力士のマゲを結いつつ、茨城県阿見町の二所ノ関部屋に通って大の里らのマゲを結う。二所ノ関部屋の床二が昨年9月に退職して床山がいなくなったため、地理的にも近い床秀に依頼が来た。
通常の稽古の日は、まずは式秀部屋に行き、力士のマゲを結う。JR龍ケ崎市駅からひたち野うしく駅に行き、二所ノ関部屋で力士のマゲを結う。式秀部屋の稽古は午前8時から、二所ノ関部屋は同9時から。床秀は「この1時間のずれが大きいんです。1日で合わせて30人の頭をしばります。やりがいがありますね」と殊勝に言う。
異なる部屋の横綱のマゲを、1人の床山が結うケースは極めて異例。多忙ゆえ、年末年始で休めたのは大みそかだけだった。床秀の師匠、式秀親方(元幕内北桜)は「床秀はチャレンジできる男、使命感を感じて一生懸命突っ走る男なんです。朝からでかい犬の散歩もして、運動量もすごい。そして仕事もまじめです」と太鼓判を押した。
床秀は「横綱の髪を触ることはなかなかできない。横綱を担当しないでやめていく床山もいます。今、相撲界を盛り上げている両横綱に携われるのは幸せですね。指名していただけるのは本当にありがたいです」と話している。【佐々木一郎】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)


