36年前に認可が下りた国産の「バルーンカテーテル」は、緻密な仕上がりで心臓の働きを助け、世界で17万人もの命を救ってきた。
この開発を行ったのが医療とは無縁だった町工場の社長、筒井(劇中では坪井)宣政氏だ。心臓病で余命10年を告げられた娘を救いたい一心で私財をなげうち、医学界の「先例主義」の壁を次々に乗り越えた。
映画は、原作「アトムの心臓」を書いた清武英利氏が「人間の愛は不可能を覆す力を秘めていることを証明した」と振り返る奇跡の一家の物語だ。
父宣政を演じるのが大泉洋で、血管がはち切れんばかりの熱演。十数年の開発期間をあっという間に感じさせる濃密な空気が全身からにじみ出てくるようだ。
終盤、死期を悟った娘(福本莉子)から「私の命はもう大丈夫だから、その知識を苦しんでいる人のために使って」と吐露されるシーンの父の号泣姿には、予期していても泣かされる。
妻役に初共演の菅野美穂、3姉妹のあとの2人を川栄李奈と新井美羽が演じ、支え合う姿にまた、泣かされる。「君の膵臓をたべたい」(17年)の月川翔監督は、泣かせどころの間合いを心得ている。【相原斎】
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