バラエティー番組に登場する「天然キャラ」は、素顔に接してみれば実は営業用に作りあげたものだったということが少なくない。

 だが、この人は間違いなく「本物」だ。女優の綾瀬はるか(32)をインタビューして改めてそう思った。

 映画に付きものの舞台あいさつでは毎度会場の笑いを誘い、共演者から「周りの人を全員ツッコミにする(ボケ)キャラ」と言われたこともある。

 「舞台あいさつも本当はすごい緊張しているんですよ。私に振らないでほしいって心の底から願ってます。一方で、せっかくお客さんが来てくださっている場だから、みんなに笑ってもらいたい。あんまり硬くなっちゃいけない、とは思ってます。何も考えてないわけではないんですけど、きっと考えすぎたらうまくいかないんですよ」

 どんな質問にも目をそらさずに答える。正直な思いが伝わる。20歳のときにドラマ「世界の中心で、愛を叫ぶ」に主演し、以来ずっと一線で活躍してきたのだから、わざわざ「天然キャラ」を売り物にする必要がないのも確かである。

 「長くやってると、何度も一緒にお仕事をするスタッフさんがいて信頼関係とか絆ができるじゃないですか。そうすると自然に伸び伸びできるようになるときがあるんです。子ども返りというか」

 10日公開の主演映画「今夜、ロマンス劇場で」は、モノクロの旧作映画の中のお姫様が現実世界に飛び出し、青年と恋に落ちる物語。メルヘンを極めたような展開は、「子ども返り」の感覚がなければ演じきれなかったのかもしれない。キャリアを重ねながら、むしろ新鮮さは増していく。強みである。

 恋愛、結婚観も明かしてくれた。

 「たぶん考えすぎタイプなんでしょうね。なかなか1歩が踏み出せない。石橋をたたいて、たたきすぎて割っちゃって、あれ割れちゃったってじっと見ているようなタイプです」

 恋のうわさが浮上しては鎮火していく背景が垣間見えた気がした。