10月13日付での退団を発表している宝塚歌劇団の星組トップ紅(くれない)ゆずると、相手娘役の綺咲愛里(きさき・あいり)の退団公演「GOD OF STARS-食聖-」「エクレール・ブリアン」が12日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。

男役18年-紅の最後の芝居は、抱腹絶倒だった。サヨナラ公演といえば、芝居の締めは、ひとり背を向けて去る-パターンが王道だが、現役5組で唯一の大阪出身トップは「笑ってサヨナラしたい」と希望。芝居のラストは組メンバー総出の大騒ぎとなった。

包丁やおたま、鍋…料理道具を手に歌い踊る人情喜劇。コメディーの演出に定評のある小柳奈穂子氏も「このジャンル、紅は他の追随を許さない」と高く評価し、涙を誘う場面はほぼない異例の最後の芝居だ。紅は魔界から落ちてきた天才料理人を演じる。

自信家で恩人にも高慢な態度をとるが、人情味にあふれ、紅と同じ関西の兵庫出身の相手役、綺咲とは丁々発止のやりとりでわかせる。紅は「本当は料理をよく知らなかったり…緩急をつけた芝居を見せたい」と言い、綺咲は、料理人の娘なが「天文学的に料理が下手」な役どころ。素手でカンフーで戦う“武闘派”で、「今までで一番強い女」に挑戦している。

次期トップの礼真琴(れい・まこと)は、紅の弟子の料理人だが、師匠を裏切ってしまう。とはいえ、嫌味な役ではなく「へっぽこキャラ」。絶妙の芝居感で、紅・綺咲の関西出身コンビとからむ。芝居、ショーともに、花組から移り、次期トップ娘役に決まった舞空瞳(まいそら・ひとみ)と、コンビを組む。

喜劇の芝居とは一転してショーは、ベテラン酒井澄夫氏が演出し、ゴージャスな構成。きらびやかな衣装で場面が展開し、黒えんびでは三味線の音色にのせて踊る場面もある。いよいよ退団公演がスタートし、紅は「一瞬、一瞬を楽しんでほしい」と話している。

宝塚大劇場は8月19日まで。東京宝塚劇場は9月6日~10月13日。紅、綺咲らは今作の東京公演千秋楽をもって退団する。