大橋悠依(25=イトマン東進)が素晴らしいレースをやってのけた。

平泳ぎで無理をせず、最後の自由形に余力を残した。400メートルの結果から優勝ラインを2分8秒台に設定し、そのペースをしっかり守った。すでに金メダルを手にしていることで、気持ち的にも楽に泳げたのだと思う。

ラスト50メートルの自由形が速かった。30・75秒は決勝8選手中最速。直前の平泳ぎでスタミナを使い切っていなかったため、楽に泳げたのだろう。平泳ぎは、プル(腕のかき)とキックのタイミングが難しい。腕や脚のパワーがあっても、手と脚をうまく合わせないと逆に抵抗になる。今大会の大橋は、この微妙なタイミングがピタリと合っている。だから、力を使うことなく勝てるタイムで泳げた。

逆に、ライバルたちは互いを意識しながら平泳ぎで競り合い、体力を消耗していた。自由形に強いウォルシュらが最後に伸びなかったのは、そのためだ。米国の2選手はともに10代、初出場の五輪で初の決勝レースだったから、焦ったのかもしれない。大橋はライバルたちと離れた2コース。中央の争いを意識することなく自分のペースで泳げたこともよかった。(84、88年五輪代表)