スペインリーグ第29節エスパニョール戦に敗れ6連敗を喫したマジョルカは、今季初めて降格圏内の18位に転落している。

この深刻な状況を打開するためクラブは早急に動き、ルイス・ガルシア監督を解任し、メキシコ人監督ハビエル・アギーレを招聘(しょうへい)した。

契約期間はリーグ戦残り9節の今季終了までだが、残留を達成した場合、契約延長できるオプションが付いている。

アギーレは過去、オサスナ、アトレチコ・マドリード、サラゴサ、エスパニョール、レガネスで、スペインリーグ計381試合を指揮した豊富な経験がある。さらに母国の代表やクラブだけでなく、日本代表やUAE、エジプトのクラブでも指揮を執ってきた。

最近までメキシコのモンテレイで監督を務めていたが、クラブワールドカップの敗戦や国内リーグ戦の成績不振により2月に解任されていた。

アギーレが最後にスペインで監督を務めたクラブはレガネス。2019-20シーズンの途中から就任するも、冬に得点源のエン=ネシリをセビリア、ブライトバイテをバルセロナを引き抜かれ戦力が著しく低下した。

そんな厳しい状況の中、リーグ戦26試合7勝10分け9敗の勝ち点31という好成績を収めたが、監督就任前の勝ち点がわずか5だったことが大きく響き、あと1歩で残留の勝ち点に届かず、2部降格の憂き目に遭っていた。

現地メディアはリーグ戦6連敗中で降格圏内のマジョルカに対して、失点の多さ、決定力不足、ゲームメーカーの不在、成績不振による選手たちの自信喪失など、アギーレが早急に解決すべき問題点がいくつも挙げている。

中でも最優先事項は、スペインリーグで2番目に多い失点を減らすことだろう。ここまでの総失点は最下位レバンテ(58失点)に次ぐ49。最近は特にミスによる守備の脆弱(ぜいじゃく)さを露呈し、ここ12試合連続で失点している。

また、今冬の移籍市場でパリ・サンジェルマンより期限付き移籍で獲得したGKセルヒオ・リコが、期待されたレベルのパフォーマンスを発揮できていないことも大誤算となっている。

降格圏に沈んでいるため、当然のことながら守備だけでなく攻撃面にも大きな問題を抱えている。マジョルカの総得点は26と、19位アラベス(23得点)、17位カディス(25得点)に次ぎスペインリーグで3番目に少ない。

今季前半戦、FW陣がことごとく機能しなかったため、今冬の移籍市場でラツィオからの期限付き移籍でムリキを補強した。加入直後は高さを存分に生かしたサッカーを展開して勝ち点を獲得できたが、それも長くは続かず、再び得点力不足に陥っている。

そのため現地では新監督に“ムリキ効果”の復活を望む声が出ている。アギーレは入念にゲームを組み立てるのではなく、縦に速いサッカーを好むため、前線で存在感を発揮しポストプレーに優れたムリキとの相性がいいとみられている。

マジョルカの地元紙ディアリオ・デ・マジョルカは、アギーレのやるべきことのひとつとして“久保のベストのパフォーマンスを引き出すこと”を挙げている。

アギーレはマジョルカ監督就任時、久保がチームで重要な存在になるかを問われ、「そうなる必要がある。彼は他の選手とは異なり、違いを生み出せる選手だ。技術やドリブルの能力が高く、観客を沸かすことができる。今、チームに必要とされている」と大きな期待を寄せていた。

一方、同紙は「久保は変化をもたらすためマジョルカに戻ってきたが、ほとんどできていない」と厳しく指摘した。

続けて、「レアル・マドリード復帰を切望する期限付き移籍の選手であり、高給取りのひとりであるため、チームは彼にもっと多くのことを要求しなければいけない。そのためにはパフォーマンスを大幅に改善し、ゴールに近づいた時、もっと大胆さを示す必要がある」とプレーに物足りなさがあることを強調し、「アトレチコ・マドリード戦ではチームに勝利をもたらす記憶に残るゴールを決めたが、より安定したパフォーマンスを見せなければならない」と記している。

久保の今季のリーグ戦成績は20試合(先発15試合)、1281分出場、1得点0アシストとなっている。

アギーレは先週より練習を開始したが、久保、ムリキ、バリエント、ババが代表戦により不在、さらに今節はライージョとジャウメ・コスタのDF陣が出場停止のため、初戦のヘタフェ戦の先発メンバーは現時点で未知数である。

前節エスパニョール戦でリーグ戦10試合ぶりに先発落ちした久保は、アギーレのチーム作りに2日間しか参加できないため、今節、スタメン復帰できるかは微妙な状況だろう。

システムに関して、ルイス・ガルシアが4-4-2と4-2-3-1を併用したのに対し、アギーレはスペインで最後に監督を務めた19-20シーズンのレガネス時代、5バックをベースとした5-4-1を多用した。その他、前線に少し厚みを持たせた5-3-2、ウイングバックを高めに配置した3-4-2-1や3-4-1-2、回数は少ないが4-4-2や4-3-3で臨んだこともある。

一方、モンテレイでクラブワールドカップを戦った際のシステムは4-3-3だった。そのためさまざまなオプションがあると思われるが、現地メディアはヘタフェ戦に向け、守備を強化するためDFの数を増やし、3枚のCBで臨む可能性があると推測し、アギーレのプレースタイルについては堅守速攻だと分析している。

第29節終了後のマジョルカは勝ち点26で18位。これは2部に降格した2季前の同節終了時の勝ち点25の18位という成績に酷似しているため、残り9節で抜本的な改革をしない限り、2部落ちが濃厚であることを意味している。

昨季、降格圏内一歩手前の17位で残留したエルチェの勝ち点は36。そしてここ5シーズンの17位のチームの勝ち点平均は38・4。これを残留のボーダーラインと考えた場合、マジョルカは今後9節で勝ち点10・13が必要となる。

マジョルカはこの後、ホームで4試合(Aマドリード、アラベス、グラナダ、ラヨ・バリェカノ)、アウェーで5試合(ヘタフェ、エルチェ、バルセロナ、セビリア、オサスナ)に臨む。

ホームの方がアウェーよりも少なく、欧州チャンピオンズリーグ出場圏内の強豪チームとの対戦を3試合も控えており、残る勝ち点27のうち、半分近くを取る必要があることを考えると、非常に厳しい状況だと言わざるを得ないだろう。

さらにマジョルカは2日に残留争いのライバルであるヘタフェと対戦するが、特にアウェーでの戦いを苦手としている。ここまでの14試合で勝ったのはわずか2回のみ。最後に勝利したのは昨年12月のAマドリード戦で、現在6連敗中だ。

そのため下降の一途をたどるマジョルカの残留は、アギーレが短期間でチームに新たな息吹をもたらして悪い流れを断ち切り、革命を起こせるかどうかにかかっている。【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)