欧州王者のレアル・マドリードが22-23シーズンに向けたプレシーズンを8日にスタートした。

Rマドリードは今夏、パリ・サンジェルマンのフランス代表FWエムバペ獲得に失敗。しかしチェルシーとの契約が満了したドイツ代表DFリュディガーをフリー、モナコのフランス代表MFチュアメニを移籍金8000万ユーロ(約112億円)+出来高ボーナス2000万ユーロ(約28億円)で獲得し、着実にチーム力を上げている。着実にチーム力を上げ、アンチェロッティ監督はすでに今夏の補強終了を宣言している。

さらに期限付き移籍を終えた久保(マジョルカ)、マジョラル(ヘタフェ)、オドリオソラ(フィオレンティーナ)、ヘイニエル(ドルトムント)が復帰。4人の去就はまだ決定していないが、とりあえず全員がプレシーズンに参加した。

一方、マルセロ、ベール、イスコが契約満了で退団し、ヨビッチがフィオレンティーナに移籍したため、現在のメンバーは27人となっている。選手登録は25人までできるが、アンチェロッティ監督は大所帯のチーム編成を望んでおらず、人員整理を敢行するつもりであるという。

この中で久保とヘイニエルはEU圏外枠の問題により残留は不可能。久保に関してはレアル・ソシエダードへの完全移籍が濃厚となっている。

さらにクラブは2~3人の放出を考えており、その候補としてバジェホ、セバージョス、マリアーノ、オドリオソラなどが挙がっている。一方、退団の可能性が報じられていたアセンシオはエムバペが加入しなかったことにより最終的に残留を決断したという。

アンチェロッティ監督は昨季、4-3-3のシステムをベースに欧州チャンピオンズリーグ(CL)、スペインリーグ、スペイン・スーパーカップの3冠を達成。今季の目標はクラブ史上初の6冠(欧州CL、欧州スーパーカップ、クラブワールドカップ、スペインリーグ、国王杯、スペイン・スーパーカップ)に他ならない。

この状況下、退団の可能性のある選手を含めたRマドリードの現時点でのメンバーを見てみると、全ポジションが2人以上でうまくカバーされている。

久保の退団が濃厚となった右ウイングは、チームの中で競争が最も激しいポジションといえるだろう。ベールは去ったが、昨季終盤に欧州CLで鍵となる活躍を見せたロドリゴ、先月の代表戦でMVP級のパフォーマンスを発揮したアセンシオ、右サイドのスペシャリストであるルーカス・バスケスと、さまざまなタイプの選手がそろっている。さらにアンチェロッティ監督には昨季終盤に示したようにバルベルデ起用というオプションもある。

GKは今季もクルトワとルニン。右サイドバックにはカルバハルとオドリオソラがいるが、もしEU圏外枠に空きができた場合、クラブは高評価しているBチームのカスティージャ所属のブラジル人DFビニシウス・トビアスの昇格を検討しているという話もある。

センターバックはミリトン、ナチョ、バジェホ、新戦力のリュディガーの4人。昨季、同ポジションで大活躍したアラバはマルセロが抜けメンディのみとなった左サイドバックでプレーする可能性がある。

長年問題になっているカゼミロのバックアップに関しては、チュアメニ加入で解消されるかもしれない。インサイドハーフについては今季もモドリッチとクロースが健在で、バルベルデやカマビンガ、セバージョスが控えている。

今年のバロンドール最有力候補に挙がるベンゼマが34歳のため最も懸念されるセンターフォワードについては、ヨビッチを放出したものの新たな補強を行わないのこと。期限付き移籍で戻ってきたマジョラルやカスティージャのラタサが代わりを務め、ベンゼマの衰えを考慮し、2年後にマンチェスター・シティーのノルウェー代表FWハーランドを獲得するプランがあるという報道もある。

左ウイングのレギュラーは昨季、特に得点面で大きな飛躍を遂げたビニシウスで間違いないが、長らく痛みを抱えプレーの妨げになっていた足首のプレートを昨季終盤に抜き、今季の復活を誓うアザールが面白い存在になるかもしれない。

派手さはないものの堅実な補強で戦力を上積みしたRマドリードはこの後、19日にアメリカツアーを開始し、23日にバルセロナ、26日にクラブ・アメリカ、30日にユベントスと対戦する。

その後、来月10日にヘルシンキで行われる欧州スーパーカップで、鎌田大地と長谷部誠を擁する欧州リーグ王者のフランクフルトと今季最初のタイトルマッチを争い、同月14日にスペインリーグ開幕戦アルメリア戦を迎える。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)