4年前に開催されたブラジルW杯で、ウルグアイ代表のルイス・スアレスがイタリア代表DFジョルジョ・キエッリーニの肩にかみつき、4カ月の活動停止と10万スイス・フラン(約1100万円)の罰金処分を受けたことは、今も多くのサッカーファンの脳裏に刻まれているだろう。あれから約3年が経過した昨年8月、実はここドイツでも、ハノーバー所属のウッフェ・ベック(冬にドイツ2部フュルトへレンタル移籍)がファンにかみつくという事件を起こしていた。

 大衆紙「ビルト」によると、今季第2節にハノーバーは本拠HDIアレーナでシャルケと対戦したが、半月板損傷のため戦列を離れていたベックはVIP席でこの試合を観戦していた。そこで同選手は近くの酒に酔ったシャルケファンとけんか騒ぎを起こしたあげく相手の腕にかみつき、傷害の罪で5万ユーロ(約650万円)の罰金を裁判所から命じられていたという。

 しかしベックはこの判決に納得がいかず控訴。第二審が4月17日に行われ、そこでベックは当時の様子についてこう話している。

 「VIPのファミリー席にいたんだけれど、本来あの席はハノーバーの選手とチーム関係者のために用意されている。しかしなぜか3人のシャルケファンが我々の後ろにいた。完全に“間違った場所”だよ」

 「そして試合終了5分前になったところで、急に僕の顔の前に携帯電話が現れた。さっき話したシャルケファンの一人が、写真を撮るふりをしていた。わざと僕の顔の前に携帯を持ってきて、試合観戦の邪魔を始めたんだ。僕はその携帯を3回どけたけど、まだやめないからついにそれを取り上げた。そしたらそのシャルケファンに、後ろからいきなり首を絞められたんだ。僕はパニックになり、彼の腕にかみついてしまった」

 この控訴審でベックから“逆告訴”を受けたシャルケファンは「本当に、ただスタジアムの写真を撮りたかっただけ。首も絞めていない」と真っ向から否定し、他のファン2人も法廷でこれに同意した。しかし現場に居合わせ、この日出廷したハノーバーのチームメート、イベル・フォッスムと、ハンドボール選手カスパー・モルテンセンは、3人の意見に異議を唱えており、「あんなに人の顔が赤くなるなんて、今まで見たことがなかった」と、首絞め行為が実際にあったことを主張している。

 同紙によると、証人陳述がすべて終了した後、フランツィスカ・シュテフェン裁判長は「ベックが正当防衛を行ったことは否定できない」と判決文を読みあげ、事件当時酒に酔っていたシャルケファンの主張と第一審を破棄。見事に無実を勝ち取ったベックは、満足げに法廷を後にしたという。