18年W杯ロシア大会の日本代表監督で、タイのA代表とU-23代表の兼任監督に就任した西野朗氏(64)が19日、都内で会見した。約1年ぶりの現場復帰を「幸せ感」と表現し、まずは東南アジアのトップに成長させることを約束。その先の20年東京五輪と22年W杯カタール大会へ「導く一助になりたい」と目標を口にした。9月5日のW杯アジア2次予選ベトナム戦(ホーム)が初陣になる。

   ◇   ◇   ◇   

ほほ笑みの国タイの新監督に就いた西野氏は「ご無沙汰しております」と日本メディアに、ほほ笑んだ。昨年7月のW杯帰国会見以来1年ぶり。「就任報道が先行していた中で」と口角を上げながら「光栄な話だったので直接タイに行って話を聞き、持ち帰り、日本の仕事を整理してから仮契約した」。会見中に正式調印し「他国の…しかも代表監督。簡単ではないが、強いチャレンジ。覚悟を持ってやっていく」と語った。

FIFAランキング116位の国から再挑戦。「タイにはW杯予選でも(アトランタ)五輪予選でも苦しめられたし、ポテンシャルはある。ただ、思ったほど成長していない」と難儀だが「チームを率いることの幸せ感」が上回った。同席したタイ協会ソムヨット会長からも「Jリーグやロシアのように、タイも成長させてくれると確信した」。J1最多270勝、就任2カ月でW杯16強に導いた手腕を買われ「時間がないことには、まあ慣れている。そう何度も成功するか分からないけど」と笑わせた。

関係者によると、日本人のコーチングスタッフは連れていかず、現地の指導者と組む。20日にも現地へ飛び「待ったなし」というW杯2次予選へ。初陣は9月5日のホーム・ベトナム戦で「キングス杯で敗れている相手だし(G組も)絶対的なUAE以外はベトナムにマレーシア、インドネシアとシーゲームス(東南アジア大会)のような対決が待つ。ただの予選ではない」と激戦へ緊張感を言葉ににじませる場面もあった。

日本の技術委員長時代にハリルホジッチ元監督を切る要因となったコミュニケーションも課題だが「全体指導に通訳を介すのは初めてでハンディはあるが、伝え切りたい」と覚悟も示した。代表の愛称チャーン・スック(戦象)を五輪と初のW杯へ「導く一助になりたい」。最後は、胸の前で両手を合わせる伝統的なあいさつ「ワイ」を披露。コップンカー(ありがとう)と言わんばかりに、100%お辞儀した。【木下淳】