アマチュアボクシング女子で、日本初の世界選手権メダリスト和田まどか(27)が、トルコ・イスタンブールで再スタートを切る。

国際ボクシング協会(IBA)の世界選手権が5月6~21日まで開催される。

アマチュアボクシングの女子世界選手権48キロ級に出場する和田まどか(撮影・益田一弘)
アマチュアボクシングの女子世界選手権48キロ級に出場する和田まどか(撮影・益田一弘)

48キロ級で出場する和田は、14年、18年の銅メダルに続いて、自身3個目のメダルを目指す舞台になる。

「2度メダルをとっているので、最低限でも銅メダル。一番いい色を目指したいなと思っている」。

もともと大会は昨年12月に予定されていた。

コロナ禍でいったんは3月に延期され、さらに延期となって5月開催となった。

ロシアによるウクライナ侵攻で情勢が不安な中での渡航となるが「開催するということは大丈夫だと信じていくということです」と話した。

和田は女子ボクシングのパイオニアだ。

14年に日本で初めて銅メダルを獲得。日本女子が世界に通じる力を証明した。18年にも再び銅メダルで、高い技術を見せつけた。

東京五輪代表を逃して一時は引退を考えたが、入江の金メダル、並木の銅メダルなどに刺激を受けて、現役続行を決意した。

左構えから繰り出す正確なカウンターと高い技術で、昨秋に日本代表に返り咲いた。

現在は出身校である兵庫・芦屋大で、樋山茂監督の指導を受けて、技に磨きをかけている。

目標は24年パリ五輪。

そのパリでは東京五輪から実施階級変更があった。

女子は5階級から6階級に増えた。

最も軽い階級は51キロ級から50キロ級に変更となった。

わずか1キロの変更だが、大きな意味がある。

和田のナチュラルウエートは49~50キロ。適正階級は、今回の世界選手権で出場する48キロ級だ。

東京五輪では48キロ級がなかったために、1階級上の51キロ級にチャレンジするしかなかった。

時に60キロ前後から51キロまで減量する選手とは、根本的に体のサイズ、骨格が異なっていた。

技術を生かそうにも体格につぶされることがあった。

和田にとっては、本来の階級を超えた相手との戦いだったが、10キロ近くの減量する選手側にもリスクはあった。

7、8キロを超えるような減量を行うと、最後の1キロは、絶食を伴うような苦しさになる。

しかも、2週間近くにわたる大会期間中、減量した体重をキープした上で戦わなければならない。

体も疲弊するが、何よりも心が激しく消耗する。

パリではもうひとつ、大きな変更があった。

最も軽い50キロ級のひとつ上が、東京五輪の57キロ級から54キロ級になったことだ。

60キロ前後の選手が階級を選ぶ際、減量による疲弊を考えれば、54キロ級を選択することも予想される。

和田にとっては、ナチュラルウエートで10キロ近くも差がある相手と戦う機会が少なくなる。

それはボクシングが階級制をとっている本来の目的に合致するフェアな形だ。

和田にとっては、「打たせず打つ」という得意なスタイルを発揮できるチャンスが広がることになる。

和田は、3月末で福井県スポーツ協会との契約が終了となった。

競技を続けるために、スポンサー探しを行っていたが、世界選手権の準備もあってままならなかった。

救いの手を差し伸べたのは恩師・樋山監督だった。

同監督の紹介で、奈良県ボクシング連盟会長で、芦屋大ボクシング部の後援会長を務める瀬部勉氏の支援を受けることになった。

瀬部氏が経営する株式会社SEBEの所属となった。

瀬部氏は、東京五輪の出場を逃した後も、何度も連絡をくれて、気遣ってくれた恩人でもあった。

和田は「パリまで面倒をみるよ、といっていただいて。言葉だけじゃなくて、行動でも応援していただいて」と深く感謝している。

イスタンブールには、樋山監督も同行することになった。和田はあくまで大学OGの立場だが、日本連盟、そして樋山監督から了承をもらった。「大学の卒業生というだけで、樋山先生を引っ張り出す理由にはならないんですが…。すごく安心できます」と喜ぶ。

自分の可能性を信じて、支えてくれる人のためにも、和田がトルコで3個目のメダルをとりにいく。【益田一弘】

◆益田一弘(ますだ・かずひろ)広島市出身、00年入社。大学時代はボクシング部。全日本選手権に近畿代表で出場もベスト16で敗退。アマチュア戦績は21勝(17KO)8敗。五輪取材は14年ソチ、16年リオデジャネイロ、18年平昌を経験して、21年東京は五輪担当キャップとして取材した。

(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

アマチュアボクシングの女子世界選手権48キロ級に出場する和田まどか(撮影・益田一弘)
アマチュアボクシングの女子世界選手権48キロ級に出場する和田まどか(撮影・益田一弘)
アマチュアボクシングの女子世界選手権48キロ級に出場する和田まどか(撮影・益田一弘)
アマチュアボクシングの女子世界選手権48キロ級に出場する和田まどか(撮影・益田一弘)