競泳の北島康介氏(34)が13日、東京・杉並高で講演会に出席した。生徒や教員ら約750人の前で、平泳ぎ金メダルを獲得した04年アテネ五輪と08年北京五輪後に飛び出した、あの名言の裏話を語った。

 「超気持ちいい」。04年のアテネ五輪で、100メートル平泳ぎで初めての五輪金メダルを獲得した北島氏は絶叫した。そのフレーズは同年の新語・流行語大賞の年間大賞にもなったほど、世間に広まった。その感想を司会の女子生徒から問われ、北島氏は「超気持ちいい」を生披露するサービスを見せた後、発言の裏に隠された経緯を明かした。

 「流行させようと思って、発言した言葉ではなく、心の奥底から出た言葉でした。心の底からうれしくて。レース終わって、すぐミックスゾーンでインタビューを受けないといけない。でも金メダル取った時、本当にうれしくて、すごい泣きたかった。泣きたくて、泣きたくて、仕方なかったんですけど、ここ(ミックスゾーン)で涙は見せられないと思って出た言葉が『超気持ちいい』ということだった。言った後、裏の方で大泣きしてたんです」

 「何も言えねぇ」。08年北京五輪の100メートル平泳ぎでも金メダルを獲得し、連覇を達成した。最大のライバルだった故・アレクサンダー・ダーレオーエン氏(ノルウェー)に競り勝った。その時は涙をこらえられず、号泣。何とか搾り出した言葉も、人々の印象に残った。

 「この決勝が人生の中でベストレース。準決勝が終わった時に、ダーレオーエン選手との力の差を比較した時、僕が勝てる確率は50%もなかったと思う。(決勝は)イメージ通りで勝てたレース。04年は(涙を)我慢してたけど、08年の時は泣いてた。言いたいことが言えずに出た言葉が『何も言えねぇ』だった」

 ただ、こうも付け加えた。「その後、実はまあまあちゃんとしたこと言っているですよ。お世話になった人の感謝、その時の気持ちとか素直に話しているんですけど。僕の場合ワンフレーズで切られる」と苦笑いした。

 同講演会は北島氏が設立した水泳教室「KITAJIMAQUATICS」のインストラクターが、来年度から同校の水泳部を指導する縁から実現。約1時間の講演では、競技生活での経験談を中心に、人生で感じてきたことを生徒に伝えた。「皆さんの記憶に少しでも残ってくれればいい。夢を持つのはそんなに悪いことではないと少し伝えられたかなと思います」と話した。【上田悠太】