女子52キロ級で阿部詩(19=日体大)が2連覇を飾り、東京オリンピック(五輪)代表に大前進した。決勝での勝ち名乗りに注ぐ声援に、競技人生で初めて鳥肌が立った。「一生忘れない声援でした!」と紅潮した顔で歓喜に浸った。

「東京の舞台で連覇できたことはとてもうれしい。ケルメンディに勝ったことは一番の自信になった」

出色は準決勝だった。念願だったリオ五輪金メダルのケルメンディと初対決。背中に手を回す力自慢の得意の形に耐え、組み手の圧力をそいだ。内股などで盛り返し、延長戦では指導差で追い上げを許しながら、最後は根負けさせて寝技。「技で決める」と決意の横四方固めで葬った。勢いに乗り、決勝でも同五輪銅メダルのクジュティナを開始30秒で得意の袖釣り込み腰で一蹴。5試合全て違う技で勝負を決める多彩さもみせ、再びの頂点に立った。

2月に左肩を負傷したが、5月の国際大会で快勝して上向きに。さらに今大会では「勝利の法則」も徹底した。昨年に続き、夙川学院中高で6年間指導を受けた垣田コーチに練習パートナーを依頼。都内での最終調整では同階級では異例の体重90キロの男性を豪快に投げ込んだ。

これで外国人相手に45連勝とし、銅メダルの志々目らと争う東京五輪代表選考で、大きく抜け出した。兄一二三が3位に終わり「お兄ちゃんが勝っていたら最高だったんですけど…」と悔しさも残ったが、11月のGS大阪を制すれば、先に初五輪が見えてくる。

「異常な強さを誇る怪物になりたい」。そう言い続けてきた。2連覇で怪物になれたか聞かれ「周りに聞いてみます」と照れた。来年の同じ舞台、そこで勝てば文句なし。「また同じような声援を浴びたい」と人生2度目の“鳥肌もの”に思いをはせた。【阿部健吾】

◆阿部詩(あべ・うた)2000年(平12)7月14日、神戸市生まれ。5歳で柔道を始める。兵庫・夙川学院高-日体大。17年世界ジュニア選手権優勝。18年世界選手権、同GS大阪大会優勝。右組み。得意技は袖釣り込み腰と内股。趣味はカラオケ。158センチ。