GT500クラスは予選2位の大嶋和也(32)、山下健太組(24=WAKO’S 4CR LC500)が2位に入って初の総合優勝を決めた。

行くしかなかった。山下はアクセルを踏み込んだ。王者を争う平川は2台体制のトムスチームのアシストもあって首位に浮上。3位の山下は、もう1台に5周以上もブロックされていた。「抜かなければ王者はない」。38周目。前を走る関口が遅い車に手間取っているチャンスを逃さなかった。

「ちょっと強引だったけど引くつもりはなかった」。少し前に出たが、相手も引かない。並走しながら2つのコーナーを通過し、ぶつかりながら最終コーナーへ。立ち上る砂煙から先に出てきたのは山下だった。初の王者が決まった。

「すごい衝撃だった。バイブレーションも起きて、最後までもってくれてよかった」とメカニックに感謝した。来季はトヨタからWEC世界耐久選手権に出場する予定で、スーパーGTでは走らない。「接戦で走れるのは世界的にも例がない」と残念がった。

名門ルマンチームにとっては前身の全日本GT選手権時代の02年以来、17年ぶりのドライバータイトルだった。16、17年も最終戦まで王者を争いながら2、3位に終わった。所属11年目の大嶋は禁酒、2キロの減量、車と同じ青という占いのラッキーカラーにも頼った。「エースとして、いつ愛想を尽かされるかと心配するシーズンもあった。2位とは7点差あったが、すごい緊張していた」。苦しみ抜いての栄冠だった。

忘れてはいけない人がいた。チーフエンジニアだった山田健二さん。昨年4月22日、急性心筋梗塞で亡くなった。享年54。「どうなってしまうんだろうとぼうぜんとした」と大嶋は悲嘆に暮れたが、立ち止まるわけにはいかなかった。今季から阿部和也エンジニアが加入。「車のレベルが格段に上がった。プライドもあるはずだけど、健二さんの流れを理解してセッティングなどを合わせてくれた。健二さんも天国で喜んでくれていると思う」と大嶋は言った。恩人に贈るタイトルだった。

◆山下健太(やました・けんた)1995年(平7)8月3日、千葉市生まれ。05年からカートに本格参戦し、14年マカオGP9位。15年からスーパーGT300クラスに出場し、500クラスは18年からフル参戦。16年全日本F3総合優勝。17年スーパーフォーミュラに転向し、今季は第6戦で初優勝を飾るなど総合5位。東海大工学部卒。175センチ、63キロ。

◆大嶋和也(おおしま・かずや)1987年(昭62)4月30日、福岡市生まれ。8歳からカートを始め、07年マカオGP3位、全日本F3総合優勝、スーパーGT300クラス王者。09年からスーパーGT500クラス、フォーミュラ・ニッポンに参戦。今季スーパーフォーミュラ14位。171センチ、61キロ。