2連覇を目指す紀平梨花(17=関大KFSC)が首位発進した。自己ベストへ2・79点に迫る81・18点を記録。昨年10月まで着用し、好演技が続いた青の衣装で、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)などジャンプを全て決めた。8日のフリーでは4回転サルコーへの挑戦にも意欲。テネル(米国)が2位、2年ぶりの優勝を目指す坂本花織(シスメックス)は4位、樋口新葉(明大)は5位となった。
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少し遠慮気味に、演技を終えた紀平が右拳を掲げた。緊張感ある冒頭のトリプルアクセルを鮮やかに成功。演技後半には左足首痛で回避してきた3回転ルッツを解禁し、3つのジャンプをまとめた。だが、内心は「アンダー(回転不足)を取られるかも…」。80点超えにも、喜びは控えめだった。
「キレッキレな状態に持っていきたかったから、85%ぐらい。とりあえず80点を超えてホッとしました」
焦りを何とか乗り越えた。1月には米コロラドで約3週間の合宿。45分を1日5、6コマ滑る充実した日々でも、心配し続けていたのがスケート靴だった。行動を共にする母の実香さん(48)が「世界一こだわっていると思う…」と苦笑する繊細ぶり。普段から靴の硬さの調節で巻くテープも「今は1周かな。2周だとおかしくなる」と口にし、エッジ(刃)の位置、角度までこだわる。そんな紀平が、今回は「ちょっとジャンプ構成も考え直そう…」と思うほど苦心していた。
背中を押してくれたのは、偶然の“再会”だった。米国から帰国後、昨季のSP、フリーの衣装を製作したチャコット社から、自宅に荷物が届いた。展示の依頼を受けて衣装と合わせ、3年前の靴を提供していた。展示がなければ、今も家で眠っていただろう。大会まで1週間を切り、返却された靴を手に取ってみた。
「『どうかな』って思ったけれど、それが何とかはまって、安心しました」
新型コロナウイルスの感染拡大により現地では練習以外、マスクを装着する。厳しい寒さのソウルは連日氷点下。世界のトップで戦い続ける一因は、磨き上げた対応力にある。ピークを何とか合わせ2位テネルに5・25点の大差をつけた。
中1日で迎えるフリー。昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルで初挑戦し、転倒した4回転サルコーへの欲は消えていない。世界選手権(3月、カナダ)に向けた戦略も念頭に、冷静な口調で言い切った。
「その瞬間にならないと、感覚は分からない。『やる』とは言い切れないけれど、やるつもりでイメージしたい。世界選手権までにできるだけ4回転を試合でこなしたい。でも、ノーミスの演技は絶対。自己ベストを出せれば、順位も優勝が見えてくる」
大胆さと慎重さ-。大切な2つを持ち合わせた女王が、次のステージに進む。【松本航】


