ショートプログラム(SP)首位の坂本花織(22=シスメックス)が、海外開催のGP初優勝を飾った。

フリーもトップの145・89点を記録し、合計217・61点。2位のレビト(米国)に10・95点差をつけての完勝。今大会は5度目の出場で「うれしい。やっと5回目にして優勝できたので、すごく今はうれしいです」と笑った。

演技終盤のフリップ-トーループの連続3回転ジャンプを降りると、会場は大声援に包まれた。「すごくて、自分もうわーとなってしまいそうでした」。最終盤のダブルアクセル(2回転半)着氷が少し乱れ、演技を終えると悔しそうな表情を見せながらも、得点が発表されると笑顔になった。

「世界女王」の肩書を意識せず、自分らしさを貫いた。昨季は北京五輪(オリンピック)で個人、団体銅メダル。世界選手権は初優勝を飾り、世界のトップスケーターへの階段を駆け上がった。スケートアメリカはシニア1年目だった17年にGPシリーズ初の表彰台(2位)に立ち、平昌五輪出場につなげた思い出の大会。22日のSP後には海外メディアから「世界女王として、プレッシャーはないのか」と問われた。

坂本は変わらなかった。

「正直、プレッシャーっていうのは、あまり感じていなくて、世界選手権が(3月に)終わってから半年がたって、気持ちは落ち着いています。スケート以外の仕事が増えたり、ちょっと地元(の神戸)以外で顔が知られるようになったとかぐらい(笑い)。毎年の『シーズンに向けて頑張るぞ!』という、同じ状態で臨めています」

一方でSP、フリーともに最終滑走。近年、国内外の大会で最終滑走を経験し、緊張感に向き合う術も身に付けてきた。この日も1つ前の米国の新星レビトの演技に会場が沸いた後の滑りで、しっかり勝ちきった。

「どうしてもファイナルに行きたい気持ちがあるので、優勝してると強いというのはジュニアというのはずっと分かってたことなので、やっぱり優勝をもっているとどの人より強くなるのは分かっていることですし、自分のモチベーションも関わってくるので、優勝しておきたかった。優勝できてよかったです」。

GP2戦目は第5戦NHK杯(11月18~20日、札幌)を予定。目の前に全力を注ぎ、新たなシーズンを駆け抜ける。(米ノーウッド=阿部健吾)