卓球女子で3つの五輪団体メダルを獲得し、1日に現役引退を表明した石川佳純さん(30)が18日、決断の背景を明かした。都内で引退会見に臨み、常に全力を誓って歩んだ23年の現役生活を振り返った。今後は全国をめぐる卓球教室「サンクスツアー」の完走が第一目標。12年ロンドン、21年東京五輪銀、16年リオデジャネイロ五輪銅メダルと卓球界をけん引した30歳は、新たな道に進む。

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卓球台越しに見せる険しい表情と違い、壇上の石川さんは笑顔を絶やさなかった。白のワンピースに黒のジャケット姿。90社200人ほどの報道陣を前にした会見で「自分自身、やり切った。今日は晴れやかな気持ちです」とほほえんだ。

「自分と向き合うことを諦めない。そこから逃げないポリシー。最後まで果たせたことをうれしく思います。常に100%を出すというのを、最低限の責任と思って頑張ってきました」

引退までの経緯にも信念があった。シンガポールでの国際大会を終えた3月、翌月の2大会出場が決まった。「これで最後にしよう」。年明けからの試合は常に「最後かも」と意識していた。決意は家族にだけ伝え、4月に中国、マカオを転戦。ファンへ事前の報告も考えたが「最後まで全力で戦う姿を見てほしい」という思いを貫いた。今月の世界選手権(南アフリカ)代表入りを逃し「自分の中で100%、120%…とギアを上げるエネルギーが残っていない」と感じた。

追われる立場は苦しかった。16年リオ五輪後の5年間。平野早矢香さん、福原愛さんら先輩が現役を退き、後輩と代表選考レースを戦った。自身も14歳で日本代表入りしたが「何事も追い抜く時は楽しいけれど、追い抜かれる時は苦しい」と痛感した。それでも逃げなかったから、東京五輪の銀メダルが待っていた。

約1時間の受け答えで、涙を流した場面があった。

「素晴らしいファンの方に恵まれたのは、すごく幸せなことだと思っています。その日できる全てを出してコートに立つ。その姿を見てくださり、少しでも元気や勇気が届けられていたらいいなと思っています」

ねぎらいの拍手が、その価値を示した。【松本航】

 

○…引退後の石川さんは卓球の魅力を発信していく。まずは「サンクスツアー」の完走を掲げ「あと40カ所残っている。しっかり達成したい」と意気込んだ。スポーツに関わる分野の勉強にも意欲を示した一方で、指導者の可能性を問われると「選手とコーチは全く立場が違う。やるとなれば一から勉強。まだ全然考えていないけれど、卓球というスポーツに恩返しできたらと思っています」と話した。