フィギュアスケート女子の坂本花織(26=シスメックス)が13日、地元の兵庫県神戸市内で引退会見を開いた。
会見前には、受付のスタッフから報道陣向けのメッセージカードが配布された。表面には、今年3月の世界選手権で金メダルを手に笑顔を見せる写真。裏面には、報道関係者へ向けた直筆メッセージが印刷されていた。
「競技を続けていく中で、メディアを通して私の言葉や演技、さまざまな想いを多くの方へ届けてくださったことに心から感謝しています。嬉しい時も悔しい時も、いつも寄り添っていただき、私の雑談にも付き合ってくださり感謝の気持ちでいっぱいです。これまで支えてくださったことに、心よりお礼申し上げます」と丁寧な字でつづった。
会見の質疑応答でカードに込めた思いを尋ねられると「記者の皆さん、報道の方も本当にいろんな形で私の言葉とか思いを文字にしたり、映像にしたりしてくださった。取材の時に私の雑談とかにもたくさん付き合ってくださって『もう終わりですよ』と言われながらも、べらべらしゃべったのがすごく楽しかったです。そうした感謝の気持ちを込めました」と思いを明かした。
アスリート自身による発信が主流となった中、坂本は所属クラブの決まりもあり、自身のSNSアカウントを保持していない。発した言葉は報道を通じて、初めて世に伝わっていく。かつてこんなことを口にしていた。
「個人でSNSをしていないので、記者の皆さんに世の中に伝えてもらって、初めて気持ちが伝わります。だからこそ結果だけじゃないところまで、知ってもらいたい」
時には自身の意図とは沿わない報道がされることもあっただろう。その時は、自らを省みるようにしてきた。
「(嫌だと思うことは)ありますけど、その時は『自分の伝え方が悪かったな』と思います」
言葉に責任を持つ。常にそう努めてきた。だからこそこの日の会見では、報道陣からの質問に「うーん」と考え込むシーンや、「もっと良いこと言いたかったんですけど…」と苦笑する場面があった。
形式的な応答で終わらせず、自分の本心に最も近い言葉を探す。飾らず、自然体であり続ける。誠実な人柄が、一つ一つのやり取りににじんでいた。
何よりも会見で結婚を発表したことが、その態度を表していた。SNSや所属先を通じて公表するケースも増えた中、自ら報道陣の前で「私事ですが、先日結婚しました」と打ち明ける。これまで大切にしてきたことが、垣間見えたような気がした。
最後も坂本らしかった。会見終了からしばらくたった後。会場の外で待っていた記者のもとへ歩み寄ると「また雑談待ちでしょう~」と明るく声をかけた。別れ際には一人一人と握手を交わし、手を振りながら「ありがとうございます!」と引き揚げていった。
坂本なりのメディアに対する姿勢が、色濃く表れた1日だった。【藤塚大輔】
◆坂本花織(さかもと・かおり)2000年(平12)4月9日、兵庫県神戸市生まれ。03年度後期のNHK連続テレビ小説「てるてる家族」に影響を受け、4歳でスケート開始。17年世界ジュニア選手権3位でシニア転向。1季目から18年平昌五輪代表2枠入りし、個人6位。22年北京五輪で団体銀、個人銅メダル。26年ミラノ・コルティナ五輪で個人、団体ともに銀。世界選手権は日本人単独最多4度の優勝。全日本選手権は18年、21~25年の優勝6度。ミラノ五輪の日本選手団旗手代行。159センチ。血液型B。


