[ 2014年2月12日9時7分

 紙面から ]男子ハーフパイプ決勝1回目

 平野のエア(共同)<ソチ五輪:スノーボード>◇11日◇決勝◇男子ハーフパイプ

 わずか15歳。中学3年生がでっかい夢をつかんだ。スノーボード男子ハーフパイプ(HP)で、予選を全体の2位で通過した平野歩夢(あゆむ=バートン)が93・50点をマークし銀メダルを獲得。15歳2カ月でのメダルは、冬季五輪日本選手最年少の快挙で、98年長野五輪ショートトラック男子500メートルで金メダルを獲得した西谷岳文の19歳1カ月を大幅に更新した。またスノーボード史上初、今大会日本選手初のメダルを日本にもたらした。平岡卓(18)も92・25点で銅メダルを獲得した。金メダルは94・75点をたたき出したポドラドチコフ(スイス)だった。

 中学3年生のヒーロー誕生だ。不振にあえぐ日本選手団の救世主は15歳。誰よりも高く跳び、軽々と回転し、最年少メダルをつかみ取った。予選後に「思ったほど緊張していない」と話した15歳とは思えない強心臓。「お客さんも多くて楽しめてます」と、五輪の大舞台も、まるで遊びの延長のようだった。

 父英功さん(42)の影響を受けて、3歳年上の兄英樹(えいじゅ)と、4歳のときにスケートボードと、スノーボードを始めた。英功さんはいつでも練習できるようにと約10年前、自宅近くに屋内のスケート場「日本海スケートパーク」を造った。練習環境が才能を開花させ、高いジャンプが最大の武器となった。

 壁の最上部から飛び出すジャンプは、通常の選手で平均4メートルほどの高さ。しかし平野は世界で最も高い6メートルにも及ぶ。壁の最上部近くに着地することで、U字形形状のコースを長く滑走でき、ジャンプにつなげる勢いが最大限に使える。それが平野の武器の秘密だ。

 ただ、壁の最上部に着地するには、はじかれるリスクもある。的確に、同じ場所に着地できる技術も必要で、15歳とは思えない度胸とテクニックを兼ね備えるのは至難の業だ。しかし、国内のジュニア大会で優勝を総なめにし、小4でバートンと契約。わずか12歳でプロ選手になった経験が平野を支えている。

 バンクーバー五輪代表で、現全日本スキー連盟テクニカルコーチの国母和宏に憧れる。「かずくん」と慕い、ともに生活をするようになって、さらに影響を受けた。国母直伝の炭酸飲料を取らず水しか飲まない食生活や、毎日のストレッチまで、すべてをスノーボードにささげた。

 大舞台には、めっぽう強い。13年1月に、スノーボーダーの誰もが憧れるXゲームで準優勝した際も「一番楽しかった」と振り返る。その時も、Xゲーム最年少メダリストの記録を樹立した。人が多ければ多いほど、ライバルが強ければ強いほど、力がわき出る頼もしい15歳が、日本の五輪の歴史を塗り替えた。

 ◆平野歩夢(ひらの・あゆむ)1998年(平10)11月29日、新潟県村上市生まれ。4歳から、スケートボードとスノーボードを始め、11、12年USオープンのジュニアジャムを連覇。13年Xゲームで、最年少で2位に入った。13年2月のUSオープンでは、ショーン・ホワイトに次いで2位。13年8月のW杯初戦、初出場で初優勝した。すしのサーモンと貝が好物。得意技は縦2回転、横3回転のダブルコーク。160センチ、50キロ。村上一中3年。