青学大陸上部の原晋監督(48)が4日、伝統の箱根駅伝の改革私案を披露した。連覇から一夜明けた4日、都内で日刊スポーツの取材に応えた。(1)出場校を全国に広げる(2)エンターテインメント性を高める(3)3月に実業団、大学、高校の選抜対抗駅伝の開催など。陸上界の注目度を高め、人気スポーツの野球やサッカーに対抗しようという思いから大胆に提言した。

 連覇だけに満足しない。青学大の原監督は陸上界全体の発展のため、箱根駅伝の大胆な改革案をぶちあげた。

 原監督 大前提として国民的なイベントの箱根駅伝は陸上界の宝。競技人口を増やすため、五輪でメダルを取るためには、箱根駅伝がカギを握っている。だからこそ、改革案は常に考えている。

(1)大会のオープン化       

 「関東の大学の大会ではあるが、もう関東の枠にとどめておけない状況。現在の20校にプラス10校は関東以外の大学を出場させる。全国の大学が箱根への強化を始めれば、各地域には野球、サッカーのような少年チームが増える。地域活性化にもつながり、競技人口も増加する」

(2)エンターテインメント性の向上 

 ★シード権争いの盛り上げ 「優勝争いとともに注目を浴びるシード権争いを分かりやすくする。そのためにはできるだけ一斉スタートを減らす。現行は往路でトップと10分以上遅れると一斉スタートだが、この時間を延ばす。今年でいうと3分延ばすだけで一斉スタートは12校から6校に減る。そうすれば、見る人が分かりやすくなる」

 ★観客スタンド設置 「スタート、ゴール、中継所に設ける。見やすくする努力は必要」

 ★監督の手渡し給水の復活 「昨年から廃止されたが、選手のためはもちろん、観戦者のためにも復活させてほしい。駒大の大八木監督の『男だろ!』など、監督の個性が出る。その言葉を見に行く人もいる」

 ★タスキ掛けの自由化 「肩から斜めにかける規則だが、首だけにかけてタスキをなびかせてもいい。タスキがなびくと躍動感がうまれる」

 箱根駅伝を盛り上げるため、新たな大会の設置も提案した。

 (3)高校、大学、実業団の対抗駅伝 

 「1月の箱根が終わると、10月の出雲まで駅伝がない。世間から話題を消さないためにも、3月に新たな大会をつくる。実業団のニューイヤー駅伝の上位10チーム、大学は箱根のシード10校、高校生は選抜の1チーム。『真の日本一』の大会は盛り上がるし、箱根に話題がつながる」

 もともと箱根駅伝は日本人初の五輪マラソン選手の金栗四三が五輪に通用する選手育成に発案した。今回の提言は、この考えに通じている。原監督は「身体能力の高い子供を陸上界が獲得しないといけない。そのためには箱根駅伝をもっといかさないといけない」と、最後に改革案の狙いを強調した。【田口潤】

 ◆原晋(はら・すすむ)1967年(昭42)3月8日、広島県三原市生まれ。中学で陸上を始め、世羅高3年で全国高校駅伝準優勝。中京大に進学し、3年のインカレ5000メートル3位。89年中国電力陸上部創設とともに入社したが、95年に引退。同社で営業職を務めた後、04年4月に青学大陸上部監督に就任。09年大会で、33年ぶりに箱根駅伝出場に導く。昨年は就任11年目で総合初優勝。今年は39年ぶりに全区間1位の完全優勝で連覇した。176センチ、81キロ。