ロンドン見えた!

 明日29日号砲のロンドン五輪選考レース大阪国際女子マラソン(大阪・長居陸上競技場発着)の招待選手会見が27日、大阪市内で行われた。3度目のフルマラソンとなる「トラックの女王」福士加代子(29=ワコール)は1年がかりの調整に自信満々。マラソン日本記録保持者の野口みずき(シスメックス)が欠場する中、4年前に惨敗した舞台でのリベンジを誓った。

 主役は勝利を確信しているようだった。壇上の福士は、ずっと笑顔だった。緊張を隠すためかもしれない。それでも、充実感を漂わせるには十分な表情だ。目指すのは大阪ではなくロンドン。五輪への思いを聞かれると、「出場」への意気込みを返す他の選手をよそに、福士の答えは既に舞台に立っていた。

 福士

 ロンドンではマラソンで出たい。世界のマラソン選手とどう戦えるのか。挑戦者として戦えるのを楽しみにしています。

 昨年の元日に「マラソンでロンドン」と宣言した。今回の選考レースに照準を合わせて準備。昨年7月に本格的にマラソン練習を始め、年末からの1カ月は九州で強化した。1年がかりの思いに、永山忠幸監督(52)は「状態は普通。普通であれば彼女の本来の力で十分。勝つべき選手が勝たないといけない、という使命感でやってきた。マラソンの神様がほほ笑んでくれると思う」と3度目の挑戦に自信を見せた。

 初マラソンだった08年大阪国際で惨敗した。前回は「なめていた部分があった」と調整は1カ月弱、30キロ以上の距離走は1度だけだった。「今回は一夜漬けじゃない」と永山監督。昨年からコース変更された追い風もある。高低差9メートルは14メートル低くなり高速化。福士も「フラットでタイムも出やすいでしょうし、いいと思う」と手応えを感じる。

 期待された野口との「女王対決」は流れた。「野口さんの欠場を聞いてビックリした」。その分の注目も集めるが、敵はあくまでも自分だと言い切る。「失敗してちょっとは成長したんじゃないですかね、たぶん。浮気すると集中できないのでマラソンにしました。負けたことに負けず、自分に勝ちたい」。4年間抱え続けた悪夢とのサヨナラ。歯を食いしばり走ってきた福士の本気に、神様はどう答えるだろうか。【近間康隆】

 ◆福士の08年大阪国際VTR

 「トラックの女王」が約1カ月の短期調整で初マラソンに挑戦。スタートから独走し、25キロ地点では後続に2分9秒、600メートル以上もの大差をつけたが、30キロ過ぎから失速。最後は脱水症状を起こしながら4度も転倒するなど、トップから15分以上遅れの2時間40分54秒で19位に。2度目のマラソンとなった昨年10月のシカゴ・マラソンでは、終盤に腹痛を起こしながら2時間24分38秒の3位でゴールした。

 ◆女子マラソンのロンドン五輪代表選考

 昨年の大邱世界選手権と横浜国際、今年の大阪国際、3月の名古屋ウィメンズが選考レースで、計3人が選ばれる。世界選手権はメダル獲得の最上位者が内定だったが、赤羽有紀子(ホクレン)の5位が最高。横浜国際は木崎良子(ダイハツ)が尾崎好美(第一生命)との争いを2時間26分32秒で制した。名古屋は大阪国際を欠場した野口みずき(シスメックス)や渋井陽子、土佐礼子(ともに三井住友海上)、尾崎らの出場が予想される。大阪国際の結果次第では赤羽の参戦もある。

 ◆福士と五輪

 04年アテネ五輪は5000メートルを回避して1万メートルに専念。先頭から2周遅れ、自己ベストより3分も遅い33分48秒66で完走した27人中26位に終わった。08年北京五輪はマラソンでの出場を逃し、本来の長距離(トラック)2種目で出場。1万メートルは中盤以降に先頭集団から脱落して31分01秒14で11位。4日後の5000メートルでは予選落ちした。

 ◆大阪国際女子マラソン

 82年開始。1月の最終日曜日開催で今回が31回目。長居陸上競技場発着で御堂筋から大阪城付近を走り、過去最高は03年野口みずき(当時グローバリー)の2時間21分18秒。コース変更した昨年は2時間26分29秒で赤羽有紀子(ホクレン)が優勝。