11年にカンボジア国籍を取得してロンドン五輪出場を目指していた、お笑いタレント猫ひろし(本名・滝崎邦明=34)が男子マラソンの同国代表に決まったことが25日、分かった。共同通信の取材にカンボジア・オリンピック委員会の専務理事が明かした。08年に初めてフルマラソンに挑み、走るごとにタイムを短縮してきた猫の大きな夢がかなった。

 猫の五輪出場が決まった。カンボジア・オリンピック委員会のワット・チョムラーン専務理事がこの日、同国の首都プノンペンで明らかにしたもので、他の競技の代表とともに4月に正式発表する。日本に滞在中の猫のもとにはこの日夕方に決定の連絡が入り、猫は泣いて喜んだという。所属するWAHAHA本舗によると、猫は今日26日に都内で会見を行うという。

 五輪の陸上では、参加標準記録を突破した選手が1人もいない国・地域は、男女1人ずつがいずれかの種目に出場できる「特例」がある。カンボジアはこれに該当し、猫は自己ベストが2時間30分26秒(今年2月の別府大分毎日マラソンで記録)で標準記録に届かなかったが、代表に選ばれた。同専務理事によると、カンボジア・オリンピック委員会は陸上の最終候補を男子3選手と女子1選手に絞り、国際陸連による記録面の評価などを経て代表を決めた。

 猫は08年2月に初挑戦した東京マラソンのタイムは3時間48分57秒だったが、その後、本格的にマラソンを始め、2年後には2時間55分45秒と3時間を切った。10年12月にカンボジア国内でのハーフマラソンで3位になったことを評価した同国政府から国籍を変更しての五輪挑戦を打診された。猫は、11年6月に国籍取得を申請。「1年で20分ずつ速くなっている。ベストを出せばなんとかなる」と出場に自信を見せていた。

 同年10月にカンボジア国籍取得が認められ、生活の拠点は日本に置きながら、名前は「チュマール(カンボジア語で猫の意)ひろし」として、11月にインドネシアで開かれた東南アジア大会のマラソンに同国代表で出場。2時間37分39秒の5位で、同国の北京五輪代表のヘム・ブンティンが持つ最高タイム2時間31分58秒を上回ることができなかったが、今年2月の別府大分毎日マラソンで自己ベストを更新。ブンティンのタイムも上回り、五輪出場に大きく前進した。

 同専務理事は「猫の五輪出場を祝福する。たゆまぬ努力、厳しい練習を積んだ彼にはその資格がある。わずか2、3年で記録の大幅向上を図るのは難しいが、彼はそれをやった。五輪ではまず自己記録更新を期待したい」と話している。

 ◆猫(ねこ)ひろし

 本名・滝崎邦明(たきざき・くにあき)。1977年(昭52)8月8日、千葉・市原市生まれ。目白大卒業後の03年に芸能界デビュー。「ニャ~」のあいさつや「猫ひろし」を連呼するネタなどで人気者に。07年にテレビ番組の企画がきっかけでマラソンを始め、初マラソンは08年2月の東京マラソン(3時間48分57秒)。昨年11月9日にカンボジア国籍を取得。WAHAHA本舗所属。147センチ、45キロ、足のサイズは24・5センチ。家族は妻と1女。血液型A。

 ◆日本から国籍を変えて五輪に出場した主な選手

 フィギュアスケートの井上怜奈は日本代表として92年アルベールビル五輪のペア、94年リレハンメル五輪のシングルに出場。05年に米国籍を取得し、06年トリノ五輪は米国代表ペアとして7位に入賞した。同じくフィギュアの川口悠子は09年にロシア国籍を取得。10年バンクーバー五輪にロシア代表ペアとして出場し、4位でメダルを逃した。