男子SPでソチ五輪金メダリストの羽生結弦(21=ANA)が完璧な演技を披露し、110・95点で首位発進した。2週間前のNHK杯での自らの記録(106・33点)を4・62点更新し、再び世界を驚かせた。SPでの2位との19・43点差はGP史上最大で、男子史上初の3連覇に大きく前進した。

 羽生にとってNHK杯に続く最高点だが、この日初めて歴代トップとなった要素に演技構成点がある。13年世界選手権で記録した47・18点で、長く表現面の「絶対王者」だったチャンを抜いたことに価値がある。身のこなしなどの「演技表現」では自身初の10点満点。ショパンの「バラード第1番」で2季目。「ピアノの曲でスケーティングを見せやすいし、逆にジャッジも見やすい。だから下手なまねはできない」とあえて難問に挑んだ成果が出た。

 1つの楽器だけが奏でる音楽を使う場合、旋律と滑りのシンクロが強調される。だからこそ、乱れも目立つ。指先や顔の角度までこだわってきた。その中で理想は、「ジャンプありきのプログラムじゃなくて、その曲ありきのジャンプとなること」「音を奏でるように滑ることができるのが自分のプログラムの完成型」。この日、決して高難度のジャンプだけが際立ったわけではない。そのすごみは、表現でも「絶対王者」になったことが示している。