眠れない夜になった。広島が2ゲーム差で追う首位巨人との直接対決2戦目の11日、2点をリードした9回に9点を失い、逆転負けを喫した。敗戦投手となった栗林を含め3投手の計45球すべてを受け続けたのは、石原貴規だった。試合後、球場を後にするのが遅いのはいつものことだが、この日はさらに遅かった。

「すぐに切り替えて、また明日とはならない。ピッチャーの人生も背負っているので」

ロッカールームでは周囲の言葉は耳に入っても、頭には入っていなかった。チーム結果に「勝ち」「負け」「セーブ」と個人記録として残る投手は酷なポジションだ。ただ、個人記録には残らない捕手も、喜びだけでなく、苦しみも投手と共有する。

「栗林さんがやられた試合の大半が僕なので、何か原因があるのかなと。あれだけ理想的な試合運びでしたし、悔いが残るというか、何かできたんじゃないかなと」

今季5敗目となった栗林だが、敗戦を喫した登板でバッテリーを組んだ捕手は坂倉が2度。石原は3度目だった。唯一、栗林に黒星を付けず、防御率0.00に導いている会沢は、7日中日戦で“抑え捕手”として試合終盤に起用された。坂倉が一塁での出場が増えていることもあり、この日から4人目の捕手として磯村が1軍に昇格した。新井体制下初の捕手4人制でも、この日は抑え捕手を起用せず、僅差の最終回までマスクを託された。目先の結果とともに、来季以降も見据えて選手起用する新井監督の思いもあったに違いない。何より結果が求められるシーズン終盤。直近5試合で3試合スタメンマスクを被る石原への期待の高さは感じられる。それだけに、起用に応えられなかったことが何より悔しい。

「僕は昨年、ほとんど1軍にいなかったので、優勝争いやAクラスの争いをすること自体が初めて。1球1球の重さが違う。ただ、そこで“経験”と言われるのは寂しいし、悔しい。もう大卒5年目なので、経験どうこう言っている場合はじゃない。捕手が評価されるのはやっぱり勝ち数だと思う」

肩を落としながら球場を後にした石原は帰宅後、再び9回表を戦った。投手の球質や表情、しぐさに、打者の反応…。18・44メートルの間で投手と交わす自身のサインやジェスチャー、目配りなど細部に至るまで改善点を探る。捕手であり続ける限り、その答え合わせに終わりはない。向き合いたくない現実と向き合うことが、次の1歩となる。【広島担当 前原淳】