二松学舎大付(東東京)のエース左腕・秋山正雲投手(3年)が関東第一打線を3安打1失点に抑え、3年ぶり4度目の夏の甲子園へと導いた。直球を両サイドに決め、チェンジアップを振らせた。これで第103回全国高校野球選手権大会(8月9~25日、甲子園)の全49代表が出そろい、3日にオンラインによる組み合わせ抽選会が行われる。

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バッテリーは最後にチェンジアップを選んだ。5-1の9回2死走者なし。秋山は「打者には直球の意識があったと思います」と関東第一・津原を4球で追い込んでから、低めに落とした。空振り三振。力いっぱい左こぶしを握った。「今までやってきたつらいことがあったから、うれしさが増したのかな」。もみくちゃにされながら喜びに浸った。

前日の準決勝で最速152キロを出した相手エース市川との投げ合い。秋山も最速146キロと遅くないが、意識したのは「丁寧に、丁寧に」。自信のある直球を両サイドに決め、7回先頭の中前打まで無安打を続けた。「打たれて会場が盛り上がって。そこで(無安打と)気がつきました」と照れた。それだけ、目の前の1球に集中していた。

最後の1球は夏直前まで“禁止”されていた球種だ。市原勝人監督(56)の指令で、練習試合は右打者には内角直球とスライダーに限定。「右の外真っすぐに自信がある。そっちの方が安全だから偏っていた」と同監督。得意なボールを奪うことで、内角への球を磨かせ、打者に向かう気持ちを引き出した。秋山は「制限したことで調子が良くなりました」と成果を得た。

OBの巨人大江と、同じ左腕で背格好が似ていることから「大江2世」と呼ばれる。先輩を意識したきっかけには、2年前の都大会1回戦の苦い経験がある。1年生ながらエース番号をもらい、明大中野八王子戦に登板。が、味方の失策が絡み負けた。試合後、市原監督から「大江は気持ちの出し入れがうまかった」と教えられた。それからだ。「仲間のエラーを助けたい」が信念となった。この日は8回に味方の失策から1点を失うも、大量失点は防ぎ、勝利をつかんだ。

打っても先制打含む3安打。初めて甲子園に立つ。「ワクワクすると思います。全国優勝を目指して出せる力を全て出したい」。もう楽しみを抑えられない表情だった。【古川真弥】

 

二松学舎大付・市原勝人監督(秋山について)「最終回の前に『まだまだ終わってない。ここからは気持ちだぞ』と言ったら、『気持ちでは負けません』と。頼もしい。技術以上に、メンタル面で成長しました」

二松学舎大付・鎌田直樹捕手(3年、先発秋山を巧みにリード)「ホームランだけは打たれないようにと、データ通りに配球した。昨日の方が良かったが、高めの球に勢いがあった」