西武岡田雅利捕手(35)が今季限りで現役引退を決断したことが3日、分かった。その後、球団から正式に発表された。
「引退させてもらいます」
後悔はない。現役選手としてやり切った。膝の痛みに悩まされ続けた。23年3月、手術を受けた。聞き慣れず、かつ衝撃的な名称。「大腿(だいたい)骨・脛骨(けいこつ)の骨切り術」。岡田にとっても衝撃的だった。
「何年か前にその名前を聞いた時点で、ちょっともう、こんなんできるわけないわ~ってずっと逃げてきてて、いろんな注射だったりごまかしてやってたんですけど。阪神の糸井さんにも骨切りしないとダメって言われて。それで良くなったって聞いてたんで」
具体的にはどんな手術だったのだろう。
「骨切って、そこに人工骨を入れて、ボルトで固定してって感じですね。本当は2時間くらいで終わるらしいんですけど、まだ若いから骨が固くて、3時間ちょっとかかりましたね。終わって麻酔が切れた後の痛みはもう、ほんましんどかったです」
慎重に慎重を重ね、じわじわとリハビリを始めた。初めて練習場に姿を見せた日、思いを尋ねた。
「もう終わりかなというのが頭にあって、最後どうかなというところで決断したんです」
「野球選手として前例がない手術なので復帰できるかも分からないです」
数カ月してからまた尋ねた。
「階段でいうと1歩1歩ちゃんと上れてる感じがあって、踏み外してることもなく来てるんで、そういう部分ではいいのかなとは思うんですけど。でも果たして、その先がほんまに野球できるのかなっていうのはまだ何かこう、描けてないなというのは」
30代半ば、若手捕手も出てきている。そのギリギリの言葉から、彼の頭に「引退」が付きまとっていることは想像でき、その心中を察すると苦しかった。
リハビリの道中でたまに声をかけ、写真を撮り、SNSにアップした。フォロワーからの反応が他のどの選手よりも大きかったことが印象的だった。“岡ちゃん”は愛されていた。
愛されていることをどう思うか-。直球で1度尋ねたことがある。照れくさそうにして、ちょっと変化球で返事をくれた。若手へのメッセージだった。
「現役やめるとファンがいなくなるのは当たり前なんで、現役をやってる時はファンの人をめちゃくちゃ大事にしてほしい。サイン書いてください、って一般社会では絶対にないことなんで。もっともっと大事にしてほしい。サインを飾ってくれるなんか、僕らにとってめちゃくちゃうれしいですし。ファンのひと言で頑張れる。僕らにとって一番の安定剤ですよ」
そんな岡田は、記者の私に“めちゃくちゃうれしい”ひと言をくれたことがある。自分が書いた記事に対して、記事の主役たちがどう思っているかはなかなか知ることができない。
具体的な内容は避けるが、岡田はそれをニヤニヤしながらも、正面からはっきりと教えてくれた。周囲の選手(?)たちがどう感じているらしいかも、うわさ話としてこっそり教えてくれた。それは仕事への何よりの励みになった。
引退試合は9月14日のロッテ戦(ベルーナドーム)に決まった。岡田とファンの双方が、その関係性を〝めちゃくちゃうれしかった〟と伝え合う場になればいいな、と思う。【23年西武担当=金子真仁】



