西武ドラフト1位の大石達也投手(22=早大)が20日、新たな一面を見せて実戦デビューした。紅白戦に先発し、2回を無安打1四球で無失点とほぼ完璧に抑えた。直球の最速こそ140キロだったが、第1球にカーブを投じるなど全27球中7球が変化球で、これまでの剛腕とはひと味違うニュー大石を披露した。大学時代の抑えから先発に転向することを受けての“変身”で、緩急を生かした初登板となった。

 最速は140キロ止まり。155キロ右腕として鳴らした逸材の実戦初登板としては物足りない。しかし、大石が投じた27球には、数字で測れない魅力がつまっていた。初回、先頭の打席には売り出し中の4年目斉藤。大きく振りかぶって、いなすような108キロのカーブから入った。記念すべきプロとしての1球目に、自信もこだわりもある直球ではなく、キャンプで本格習得したカーブを選択。驚く周囲をよそに試合後、「(捕手に)初回はカーブで入りたいと言いました。先発になって、変化球から入る練習をしたかったので」と事もなげに振り返った。

 「ちょっと変な感じ」というなじみの薄い、真っさらなマウンドでも、やるべきことは分かっていた。2回、先頭のG・G・佐藤は1ストライクからスライダーで追い込み、最後はフォークで見逃し三振。「抜けました。たまたまです」と反省したが、相手の反応は違う。G・G・佐藤は「2球目のスライダーはいいところで手が出なかった。変化球の制球がいい」と評した。27球中、変化球は7球。「大学の時なら絶対に真っすぐ主体。先発として緩急をつけるために変化球を多めにしました」と理由は明快だった。

 スピード自慢の“旧ドラ1”にお手本を示した形だ。この日の最速が144キロだった菊池は4失点。白組の2番手で登板した木村は148キロを出しても2本塁打を浴びた。一方で大石は2回、銀仁朗に投じた2球目の直球がチームのスピードガンで140キロを計測したが、他はいずれも130キロ台。スピードはなくても、安打すら許さなかった。大学時代は直球の威力で押しまくっていた右腕に新たな引き出しが増えた。

 この投球術に本来の150キロを超えるボールが加われば、もっとすごくなる。だからこそ首脳陣の評価は控えめ。渡辺監督は「初めてにしちゃまあまあ。ストライクを取るのに苦労していない」とし、小野投手コーチは「長いイニングも大石らしいボールで抑えてほしい」と注文した。次回登板は3月2、3日の巨人とのオープン戦が有力だ。

 小雨が降る中で踏み出した、先発としての第1歩。初球のカーブ、変化球比率の増加。主戦場だった短いイニングへの“決別投球”が大石の晴れやかな未来を予感させた。【亀山泰宏】

 [2011年2月21日9時10分

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