【24年前の今日:1998年7月31日の3枚展開】審判へ危険球…巨人ガルベスの蛮行にミスター丸刈り 

「最も印象に残る試合は何か」。野球記者のキング・オブ・雑談テーマです。迷いなしでこの試合を挙げる先輩が多く、誰もが詳細に覚えていることに驚きました。インパクト十二分、24年前の事件をプレーバック。(1998年8月1日掲載。所属、年齢などは当時。文中敬称略)

傑作選

田誠

巨人バルビーノ・ガルベス投手(34)が、前代未聞の暴挙をしでかした。阪神15回戦(甲子園)に先発。6回裏、坪井に6点目の本塁打を喫した直後、その前の球の判定への不満から、降板してベンチに戻る直前、審判団に対してボールを投げつけ、即座に退場となった。幸い、審判員にボールは当たらなかったが、ひとつ間違えば大けがにつながりかねない危険な行為。過去の事例から、無期限の出場停止処分も考えられ、逆転優勝を目指す巨人は大きな代償を払う結果となった。

あまりの暴挙に…翌日の日刊スポーツは1、2、3面で大展開。4日後の1面「丸刈りパワー」は、長嶋茂雄が頭を丸めるという事実が重すぎ、こちらに走るしかなかったという心理状況が推測される

あまりの暴挙に…翌日の日刊スポーツは1、2、3面で大展開。4日後の1面「丸刈りパワー」は、長嶋茂雄が頭を丸めるという事実が重すぎ、こちらに走るしかなかったという心理状況が推測される

1998年8月1日の2面

1998年8月1日の2面

1998年8月1日の3面

1998年8月1日の3面

1998年8月5日の1面

1998年8月5日の1面

★橘高球審への敵意

ガルベスがグラウンド上で暴れ回り、審判団にボールを投げつけた。

子供のファンも多く詰めかけた夏休みの甲子園で、球史に汚点を残す、前代未聞の「暴挙」を演じた。

0-5と敗色濃厚で迎えた6回裏、先頭坪井の場面で騒動は起きた。カウント2-1からの4球目、内角速球をボールと判定される。

この一球でキレた。

続く5球目、チェンジアップを右翼席に運ばれKO。池谷投手コーチが投手交代のためベンチを飛び出した。

と同時に、怒りを爆発させたガルベスがナインの制止を振り切って暴れ出した。表情には、明らかに審判への「敵意」があった。

清原らが必死で止め、長嶋監督も小走りに駆け寄り、「おい! ガルッ!」と厳しい表情で大声を張り上げる。ユニホームをわしづかみにして、三塁側の巨人ベンチへ引きずり戻した。

この時点で「投手河野」がコールされていた。

★吉原の顔面に左ひじ直撃…出血

が、ガルベスの怒りは収まらない。

ベンチ前に戻ったがダンカンの「リラックスしろ」という説得にも応じず、振り向きざまに、手に持っていたボールをマウンド付近にいた審判団に向けて投げつけた。

ボールを投げつけナインから押えられる。右から2人目は長嶋茂雄監督

ボールを投げつけナインから押えられる。右から2人目は長嶋茂雄監督

投球時と同じように舌を出し、矢のような速球を……。文字通りの「危険球」が審判を襲う。

ボールはそれ、直撃は免れたが、それを見た橘高(きったか)球審が即刻、「侮辱行為」という理由で退場処分を宣告した。

ガルベスはこの後もベンチ前で大暴れ。左ひじが止めに入った吉原の顔面を直撃、出血するおまけまでついた。

橘高球審あれは非常に危ない。プロ野球の投手の球ですから。僕も20年近く野球界にいるけど、僕が見る限り(今回のケースは)初めて。当たらなかったからいいというもんじゃない。連盟にはファクスで報告しました。処分? 僕の口からは言えませんが。

暴挙に対して「無期限出場停止」の処分が決まり、会見で退団をほのめかした=1998年8月1日

暴挙に対して「無期限出場停止」の処分が決まり、会見で退団をほのめかした=1998年8月1日

★「ええ球やけどボール」

退場処分は当然、いや野球選手としてあるまじき「蛮行」だった。

ガルベスは以前から橘高球審を含めた審判の判定に不服を唱え、そのうっ憤はたまっていた。しかし捕手村田真はガルベスの怒りに同調する一方で「(問題の4球目は)ええ球やったけどボールやった」と証言している。

バルビーノ・ガルベスの乱闘で頭を丸めた巨人・長嶋茂雄監督=1998年8月5日

バルビーノ・ガルベスの乱闘で頭を丸めた巨人・長嶋茂雄監督=1998年8月5日

試合後、帰りのバスに乗り込んだガルベスは報道陣の質問にも無言を貫いた。

試合終了から2時間半たった午前0時前、ダンカンと連れ立って近所のコンビニへ出かけた。その際、報道陣に「GET OUT HERE(近付くな!)」とまくし立てた。

一昨年も中日山崎と乱闘を起こしたこともあったカリブの怪腕は、この3年間、巨投を支えてきた。

が、今回ばかりはエキサイトしやすい「気性」だけでは済まされない。連盟側が無期限出場停止、といった重い処分を下せば、球団側もシーズン途中退団といった苦しい処分を迫られる。

それほど高い代償を払う「一球」となる可能性は十分ある。

【記者の目】愚挙に厳しい処分を…罰金40,000,000円

ガルベスの行為は、全く弁解の余地もない「愚挙」である。

あらゆる種目に審判が存在し、一つ一つのジャッジによってゲームが成立していく。それがスポーツである。

ガルベスの行為は、その大原則を根底から崩してしまったものであり、絶対に許されるべきものではない。

もちろん審判の判定がすべて正しいというつもりもないし、ミスジャッジが多く見られるのも確かだ。

日ごろから、審判の未熟さを嘆く監督や選手の気持ちも分からないではない。

批判を覚悟で言わせてもらえれば、個人的には、試合中の乱闘などが起きるたびに聞こえてくる「子供の教育上、けしからん」という声には、「プロはショーの世界でもあるのだから、いいじゃないか」と反論したくなる。

だが今回は、一つ間違うと大事故につながりかねないもので「常軌を逸した報復行為」、あるいは「自分の責任を回避するための八つ当たり」としか受け取れないもの。

それが発作的なものかどうかなどという問題ではない。

スポーツを生業(なりわい)とする者が、絶対に犯してはならない「愚挙」に対して、リーグ裁定にゆだねるだけでなく、巨人軍としても毅然(きぜん)たる態度のもと、自ら厳しい処分を打ち出し、見識を示すべきだ。【野球部長・三浦基裕】

1998年8月5日の2面。球界最高4000万円の制裁金が科された

1998年8月5日の2面。球界最高4000万円の制裁金が科された

【審判への暴行例】星野監督、東尾監督も

◆島野、柴田コーチ(阪神)1982年(昭57)8月31日大洋戦でファウルの判定を不満とした両コーチが、岡田球審、鷲谷三塁塁審に殴る、蹴るの暴行を働き退場。制裁金10万円と無期限出場停止(205日間で解除)処分が科された。

◆金田監督(ロッテ)90年(平2)6月23日西武戦でボークの判定に怒り、高木球審の胸を突き、さらに2度、3度とキック。退場を宣告された後に、グラブとボールを一塁ベンチ方向へ投げつける。出場停止30日間と制裁金100万円。

◆近藤監督(横浜)94年9月29日阪神戦でセーフの判定に激高し、笠原一塁塁審を殴り退場。厳重戒告と制裁金50万円。

試合後、審判団を捕まえて不満をぶつける星野仙一監督(右)。左は上本審判=1996年9月20日

試合後、審判団を捕まえて不満をぶつける星野仙一監督(右)。左は上本審判=1996年9月20日

◆星野監督(中日)96年9月20日巨人戦終了後、引き揚げてくる審判団を待ち受け、上本審判に暴言を吐く。さらにもみ合いになった際、田中審判を2度にわたって蹴り、厳重戒告と制裁金100万円。

◆東尾監督(西武)97年7月10日近鉄戦で、判定に不満が募っていた監督が試合終了直後、丹波審判に詰め寄り、回し蹴りなど暴力を振るい退場。3試合の出場停止と制裁金10万円。