阿佐ヶ谷姉妹 のほほーんとゆったりと引き込まれるロングインタビュー

芸能人や著名人が、生きざまや本音をじっくりと語るロングインタビュー。トップスターや時の人の言葉には、人の心を揺さぶる力があります。

今回登場するのはNHKで連続ドラマ化もされた阿佐ヶ谷姉妹。無名時代から共同生活まで、自然体のインタビューーをお楽しみください。(2022年1月23日掲載。所属、年齢など当時)

ヒーロー&ヒロイン

小谷野俊哉

メガネにおかっぱ頭、おそろいのピンクのドレスで清らかな声で歌い上げるお笑いコンビ、阿佐ヶ谷姉妹。アラフィフの2人がたわいのない日常を披露して人気を広げている。飾らず、背伸びせず。ありのままの姿でお笑いの世界に飛び込んだ渡辺江里子(49)と木村美穂(48)の歩んできた道、これからの夢を聞いた。

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連ドラ化「腰抜けたわね」

文化放送「ゴールデンラジオ」の月曜レギュラーに起用されて、3月で丸2年。メインパーソナリティー大竹まこと(72)を相手に、姉の江里子と妹の美穂が“のほほ~ん”とした日常を牧歌的な語りで言葉を空気に溶け込ませる。

江里子 ちょうど、コロナ禍が始まった真っただ中にレギュラーが決まったのね。そういう意味では、エンタメ界、芸人さんたちも『お仕事がなくなっちゃった、どうしよう』って言ってた中で「ゴールデン」さんで拾っていただいた感じはありますね。

美穂 ちょうどレギュラーにさせていただいて。

大竹は所属事務所「ASH&Dコーポレーション」の先輩。優しく、的確なアドバイスをくれる。

美穂 事務所に入ってからは、もうずっと優しい。

江里子 もう10年くらい、優しいですよ。いやらしい目線ですか? 私たちにはないんですよね。

美穂 他の女性の方たちにはあると思います。私たちにはギラつくような目線はなくて町内会長と婦人会みたいな関係ですよね。

江里子 親戚って言ったらいいのかしらね。地味で普通の番組だったらカットされるような、私たちの話を広げてくれる。なんてことない話の方がお前たちは面白いと。歯ブラシとか歯磨きの話で30分、山芋の話で20分。お前たちは飾ったりするんじゃなく、阿佐ケ谷の谷を、地をはって生活しているのが面白いと思ってもらえてるんだからと。そこを丁寧に覚えていて、見たこと聞いたことを話すことを心掛けなさいと言っていただいたので。これで、合ってるかしら?

美穂 合ってる、合ってる(笑い)

元々は柄本明(73)が座長を務める劇団東京乾電池の研究生同士だった。役者修業で将来の夢を描き始めていた2人は、それぞれの立ち姿に運命を感じた。

江里子 似たような顔がいるな~って、メガネでおかっぱ。

美穂 髪形もこんな感じで。22、23歳の時かな。

江里子 それで半年後くらいに話したのよね、2人で。桜新町のミスタードーナツで話してね。それこそシティボーイズさんが好きだったり、お笑い番組をよく見ているだったり、お芝居の好みがよく似ていた。

江里子は明大文学部卒。美穂は洗足女短大卒業後、東京・玉川高島屋で寝具売り場にいた。

美穂 ピアノ科だったんですけど、20歳くらいからお芝居とかの方を見るのが好きになっちゃって。その前から真面目にやってなかったんですけど。そしたら、こんな感じになっちゃいました(微笑)。短大を卒業してから情報誌にあった高島屋に行ってみたら、入れてもらえたんです。寝具売り場で、布団はあまり売れなかったんですけど、パジャマとかシーツとか。それで、販売するのは向いてないと思ったんです。

江里子 でも、社員になったのは偉かったわね。

美穂 派遣されて行ったんですよ。

江里子 でも、潜り込めればたいしたもんよ。

美穂 渡辺徹さんと榊原郁恵さんのご夫婦が来たことがあるの(笑い)

東京乾電池で1年間、研究生としてすごした。

江里子 ちょうどコントもお芝居も縦横無尽に、自由に演じられている感じの面白い俳優さんたち。柄本さんだったり、ベンガルさんだったり、高田純次さんに、イッセイ尾形さんもちょっと関わっていた。あんまりガチガチに演劇じゃなく、お笑いの要素みたいなものを感じられるところで関われたらなと。

美穂 そうね、なんかどっちもやってそうな感じだった。

だが、劇団員として残ることはできなかった。

江里子 劇団の即戦力になる方を入れるために1年間。結構、授業料もお安かったんですよ。その1年間でいろいろ総合力を見て、そういう意味じゃ即戦力じゃなかったわねぇ。

美穂 全然、戦力じゃなかった。何もなかった(笑い)。

江里子 私はコールセンターでバイトをしながら、官公庁とかを渡り歩いたんです。リーダーみたいなところに上り詰めるくらいコールセンター好きだったんです。それをしながら、お芝居の養成所みたいなところに入って、ほそぼそと。

美穂 私はパソコン入力をする事務とか、おそば屋さんに勤めながら、演劇学校へ。

将来が定まらない状況で、人生のターニングポイントになったのはなじみの店主の提案だった。2007年(平19)に「阿佐ヶ谷姉妹」を結成する。

美穂 私は、まだ実家にいて阿佐ケ谷にはいなかった。たまにお姉さんが住む阿佐ケ谷に遊びに行って、会っていたのね。

江里子 阿佐ケ谷のうなぎ屋さんで「そんなに似てるのなら阿佐ヶ谷姉妹とかの名前でなんかやれば」と。お名前を先にいただいたので、なんかやってみる? と。最初にお話をいただいたのがお笑いライブだったんです。

美穂 ネタを考えるということが分からなかったので、お姉さんが好きだった由紀さおりさんと安田祥子さんが歌っている映像を見てやってみようとね。

江里子 何も思いつかなかったので、おふたりのコンサートをオマージュというか、1分、2分、ちょっとしゃべって、あとの6分くらいは(モーツァルト作の)「トルコ行進曲」をフルバージョンで。全部歌うというのをやって、お客様がポカーンとされてまして。だから、ちょっとざわついてたのね。

美穂 笑うというのではなかったわね。

江里子 この人たち、平気な顔して歌っているけど、なんなんだろうと思われたんでしょうね。持ち時間が4分のところを、8分もやってしまって怒られて。演劇の世界からしてみたら、2時間とか平気である世界だから、8分なんて一瞬にしか感じなかったわねぇ。今でこそ分かるけど。

美穂 最初からピンクの安いドレスを買ってね。

翌2008年(平20)にフジテレビ系「とんねるずのみなさんのおかげでした」の「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」に出場した。

江里子 オーディションからなんですが、モノマネも似てないし、メガネだし、オカッパだし。ただ、そのころ歌ネタがなかったのかと。それで、1回目から準優勝。

18年に女芸人日本一決定戦「THE W」で、歌ネタを捨てて、コントで勝負して優勝。

江里子 「みなさんのおかげ」では、ピンクの服で歌ってるオバさん2人組のイメージ。お笑いコンテストなので、そのままで出て行くより、新鮮に受け止めてもらえるのかなと。

ネット連載から18年に出版されたエッセー「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」が、昨年NHKで連続ドラマ化。江里子を木村多江(50)、美穂を安藤玉恵(45)が演じた。

江里子 腰が抜けたわね。コントでだって思いつかない設定。

美穂 ドラマ化するって、考えられないですよね。

江里子 あんなおきれいな方に。役者さんに私たちみたいな者を演じてもらうなんて。さすがNHK。NHKのコールセンターにもいたことがあるんです。

オバさん合唱団全国ツアー!?

東京23区の西部、杉並区の阿佐ケ谷の6畳一間に、18年まで7年間同居した。

美穂 お姉さんが住んでた部屋に私が越して来たの。それまではお姉さんの部屋に泊まって、アルバイトに行かなくちゃならない時にTシャツ借りたり、パンツ借りたり。今は隣同士の部屋に住んでいます。

江里子 私の方が隣に移りました。美穂さんが、押し入れのある部屋じゃなきゃいやだと。

美穂 お姉さんの方の部屋はリフォームしてあって、ロフトが付いているんです。

江里子 美穂さんが、これから階段の上り下りが厳しくなるからと堅実な考え方の持ち主なんで。

江里子は今年、美穂は来年50歳になる。10年前に今の事務所に入って、アルバイト無しでやっていけるようになった。

美穂 入ってからも、2年か3年はやっていたけど、あんまり行かなくなった。仕事とかが入っちゃって、フェードアウト。不規則だから、代わってもらうのが申し訳ない。

江里子 仕事が増えたっていうより、急に入って来るのでシフト制の仕事は難しい。芸人のお仕事だけで、まだ食べていけないんだけど、ここらへんで区切って、退路を断って頑張ったほうがいいかしらって。ちょうど美穂さんと暮らし始めて、2人でほそぼそやっていくなら食べていけるかしらという感じ。家賃も半分の3万2500円ずつですんだから。それでバイトをやめました。

今は、隣り合わせの1Kに住んでいる。豪邸に移り住む予定も、その気もない。

江里子 美穂さんが「港区の星を持っている」って占い師さんに言ってもらったことがあるんです。私は「一生、杉並暮らし」って言われたんですけどね。

美穂 私も阿佐ケ谷近辺が好きなんで。

江里子 ご近所の方がいい方で、居心地がいいんです。住まわせてもらえるなら、ずっと住みたいと。

阿佐ケ谷は爆笑問題の事務所タイタン、そして逮捕された田中英寿前日大理事長夫人経営の「ちゃんこ料理たなか」があることでも知られる。

江里子 商店街にテレビカメラがあったから、私たちのエッセーがドラマ化されたロケ撮影かなと思ったんです。そうしたら報道のカメラでした。

人生100年時代の半分、アラフィフでジワリとブレークした。夢も広がるはずだ。

江里子 女優は「こいつらは駄目だ」って残してもらえなかったんだから、無理ですよ。

美穂 お姉さんはあるかも知れないけど、木村多江さんと安藤玉恵さんとか見ちゃうとね。とても、自分じゃできないと思っちゃう。

歌ネタでブレーク、昨年の暮れはNHK「紅白歌合戦」の事前番組にも出演した。次は歌手として本物の紅白出場への期待がかかる。

美穂 歌を出したことないもんね。

江里子 正式な形ではね。

美穂 人生1回くらいはとも思うけど、恐れ多い。歌もないうちから言ってますけどね(笑い)。

江里子 すごい野望ね(笑い)」

美穂 夢があるね。

江里子 昨年、事前番組に出させてもらったけど、本番は会場にいることもかなわなかったんです。

美穂 次は客席で見せてもらうくらいはなんとかね(笑い)。

ずっと独身。

江里子 本当にご縁があればと、思っているんですけど。

美穂 私は本当に願望がないんですけど。お姉さんが1つ年が上なんで、早く行ってもらわないと(笑い)。

江里子 いいのよ、先にしてもらっても(笑い)。若い芸人さんと話していても、親戚のオバさんの感じですからね。

美穂 パートのオバさんの距離感でしか、お話しできないから。

江里子 やっぱり2人で、ほうじ茶飲んで、ああだこうだ話しているのが一番楽ちんなんで。そんなぬるま湯につかっていると、恋愛の火遊びとかやけどはねぇ。

芸風と同じく、2人の仲は明るく平穏無事。解散危機を迎えたことはない。

美穂 大げんかしたとかはない。小競り合いとかくらいかな。

江里子 意外と美穂さんの方が、しっかりしているの。阿佐ヶ谷姉妹の黒幕は美穂さん。映画も『ゴッドファーザー』とか好きだから黒幕タイプなのかもしれません。

芸能界には同じく姉妹の叶姉妹がいる。

江里子・美穂 いやいや、天と地どころか、天と泥みたいな差が(笑い)。

江里子 オバさんという枠でトップを走られているのが柴田理恵さん。

美穂 柴田理恵さんは強いわね。

江里子 本当に、どこでも素晴らしいコメントだし、人情味もあふれているし、お笑いもお芝居もできる。ライバルとかじゃなく、あそこの席に食い込むのは難しいわよねっていう話はしているんですけど。

美穂 憧れの人という感じかしら。

“やる気満々”がひしめく芸能界の中でも、芸風通り自然体を貫く。

江里子 デビューした時に、年を取ってからだからヤングに合わせたネタをやろうとしたんです。若者の歌を取り込んだけど、やっぱり無理があった。自分たちも、見ている方たちもしんどい。オバさんなんだから、オバさんのネタに特化したらいいじゃないかとね。オバさん視点になって、自然体でできて、同世代に応援してもらえました。お若い方にも、うちのおばあちゃん、お母さんに似ているとね。

美穂 オバさんメインで(笑い)

江里子 あとオバさん合唱団で、全国回るっていうのは、ちょっと夢ですね。

美穂 似たような顔を並べてね(笑い)。

飾らず、おごらず。インタビューの時間がゆっくりと過ぎていく。ありのままの姿で、平凡な日常を優しい言葉で紡いでいく。2人に引き込まれる理由はそこにあるのかもしれない。

◆阿佐ヶ谷姉妹(あさがやしまい)

劇団東京乾電池研究所で知り合い、07年10月コンビ結成。フジテレビ「とんねるずのみなさんのおかげでした」の「細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」で08年準優勝、16年優勝。18年「THE W」優勝。現在レギュラーは日本テレビ系「ヒルナンデス!」水曜、NHK「Eテレ2355」火曜など。

渡辺江里子(わたなべ・えりこ)1972年(昭47)7月15日、栃木・宇都宮市出身。明大文学部卒。中学・高校の国語の教員免許所持。ツッコミ担当。血液型A。

木村美穂(きむら・みほ)1973年(昭48)11月5日、神奈川・相模原市出身。洗足学園短大卒。血液型A。

▼文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ」のメインパーソナリティー大竹まことの話

阿佐ヶ谷姉妹とは10年くらいのつき合いだけど、変わってないね。まぁ、生活は少し良くなったのかな、それなりに。基本的に、いつもラジオのスタジオにゴボウ色の素材をタッパーに詰めて持ってくる。美帆がカリフラワーに凝って、ドロドロにして持って来る(笑い)。

姉妹じゃないけど姉妹。言ってみれば“疑似家族”。2人とも結婚してないけど、時代背景もあって、そういう人たちが増えている。「こんなんでいいのかしら」と思っていたら、阿佐ヶ谷姉妹が出てきて「それでもいいんだ」と。今までの家族の形と違う、そうじゃない形。6畳一間に2人で住んで、やってるんだと。時代の流れに、あいつら2人がマヨネーズみたいに絞り出されていたと思ってるけどね。

俺の役割は疑似家族のおじいちゃん(笑い)。年齢的には父親か。あいつらも年だからね。

いや、思うんだけど、あんなドレスを着てやってるから期待も何もね。リアルが何か分からなくなってきている。バックボーンに時代がある。何をしたら楽しいのか分からなくなってきちゃっている。近場の行楽地に行ったりして、それなりに楽しんでいる家族とかもいるけどね。

“1人キャンプ”みたいなのがはやっちゃってるじゃない。今まで仲間でわいわい宴会だ、会社の行事だ、運動会だとやってきたのが、コロナ禍で鳴りを潜めちゃった。無理してみんなで宴会やることないよ。無理して銀座に行っても高い金を取られていただけだったんだと。だんだん世の中の仕組みに気付いてきちゃった。

だったら1人で山に登って、たき火してみようみたいな。火だけは、もう何万年も人間のそばにあったからね。それが今、公園に行ってもたき火は禁止されているからね。キャッチボールも、サッカーも駄目なんだよね。公園で、みんなで楽しくっていうのは、自治体から駄目だって言われてるわけなんだよね。

そういう時代をどうしましょうっていう時に、なんか知らない人同士、2人で住めば家賃は半分だしみたいな。あんまりお金がかからないんじゃないのと。

NHKのドラマも「個人が1人でどうする?」という時代に、懐かしい阿佐ケ谷の町みたいなのにやられちゃって。「こんな関係が、まだあるのかしら」と疑問を持ちつつ、友達なんかいなくても、お煎餅屋さんと仲良くなれるし、お肉屋さんも声をかけてくれるしみたいな感じ。

地域っていうのはダイバーシティーじゃないけど、駄目になっていった小さな地域みたいなものが、なんだか、あらためて重要になってきた。阿佐ヶ谷姉妹のドラマでやったのも、大スーパーに行ったわけでもない。そこの町のおじさんとか、古びた中華料理屋みたいのが、ちょっと憧れみたいになっちゃっているのかもしれない。

今、コンビニに行っても、お金を払うのに誰もひと言も口をきいてくれないし。それが、ああいうドラマを見ると、町の中にまだ残っているものがあるのかな。そういうの、なんかいいなぁみたいな。お総菜も分けてくれるしね。

それが、今まで家族構成と地域だったのが、若い女、知らない2人と地域みたいになっている。それも、今までは多分、地域から疎外されてたみたいな。家族じゃねぇって。

だけども、これも地域だ、シェアハウスだしみたいな。これだけ人と関係がなくなって、自己責任みたいなことになっている中で「いいわよ、お総菜持って行きなさい」という関係性があったんだというのが、あのドラマが見られた理由の1つかもしれない。

そういうのが社会に広まるかどうかは別にして、願望としてああいう形。阿佐ヶ谷姉妹とか、ああいう町の風景「三丁目の夕日」みたいな世界が広がっているのが、年寄りは郷愁だし、若人たちは憧れみたいなのがあるんじゃないの。本当は入ってみると、地域は面倒くさいんだけどね(笑い)

◆文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」

2007年(平19)5月7日放送開始。大竹がメインパーソナリティー。パートナーは月曜=阿佐ヶ谷姉妹、火曜=はるな愛、水曜=壇蜜&いとうあさこ、木曜=光浦靖子・小島慶子・大久保佳代子の輪番、金曜=室井佑月。