吉本芸人がネタ動画!ニッポンの社長登場 ケツが謝罪会見 辻が切り込む

上方漫才大賞・新人賞を受賞した「ニッポンの社長」。動画では取材に遅刻したケツが謝罪。インタビューでは辻が阪神愛をガチで語ります。

おもろいで!吉本芸人

三宅敏、村上久美子

移動しながら1日に何度もステージに立ち、合間にはテレビやラジオの収録。吉本の若手芸人の中でも、今もっとも多忙なコンビに数えられるだろう。人気、実力ともに急上昇中の「ニッポンの社長」。激戦の上方漫才大賞新人賞を受賞し、さらに勢いづいた。183センチのスラリとした体形の辻(35)と、162センチでまん丸体形のケツ(31)。身長差21センチの凸凹コンビは、インタビューでも個性をフルに発揮してくれた。

4月9日、第57回上方漫才大賞の授賞式が行われ、若手コンビにとっては、ノドから手が出るほど欲しい新人賞に「ニッポンの社長」が輝いた。大賞はミルクボーイ、奨励賞はミキだった。

新人賞はノミネートされた7組が当日、漫才を披露したうえで勝者が決まる。これまでの実績、プラス当日のできばえがモノを言う。ニッポンの社長は6組が演じた後、しんがりで登場した。

 出番直前まで2つのネタのうち、どちらにしようか、迷っていたんです。先輩や周囲の人の意見を聞いても、最後の最後まで決められなかった。ただ、前に出た6組の舞台を見て「客席の年齢層は幅広い。誰にも通じる明るいネタで行こう!」と決断しました。

そのネタは「ヒーローインタビュー」。プロ野球の試合でホームランを打った選手が、アナウンサーからマイクを向けられる、あのインタビューだ。

「放送席、放送席、ヒーローインタビューです。素晴らしいホームランでしたね」とマイクを持つのがアナウンサー役の辻。ケツがヒーローとなった選手役。質問を投げかけていくうち徐々に脱線し、野球とは関係のない話に発展していくのだが、二人のシュールなやりとりが会場の笑いを誘い、見事新人賞を獲得した。

ケツ 僕らは漫才もコントも両方やってます。2021年のNHK新人お笑い大賞ではコントで優勝させてもらって、今度は漫才で受賞。どちらも評価されたのがうれしかったですね。

辻、ケツともに野球ファン。ケツは特定の球団を応援しているわけではないが、辻の方は筋金入りの阪神ファン。今シーズンの開幕から阪神タイガースについて、ツイッターに熱い思いをつづってきた。

「7点差逆転されて負けました。こんな悔しい開幕戦は25年以上応援してて初めてです。敗因は僕たちファンの油断です。僕も勝ちを確信していました。明日からは気を引き締めて、最後に一緒に笑いましょう」

3月25日の開幕戦で、辻は敗戦の悔しさをこのようにツイートした。しかし阪神は次の日も、その次の日も負けた。そのたびに辻は「今日の敗因は僕です」と反省文を書いた。

すると、従来のフォロワーに加えて、目ざとい野球ファンがこのツイッターに続々と注目。「おもしろい」と受け取ったのか、負けて悔しいやけくそなのか、辻のつぶやきは連日「いいね」を集めた。開幕戦で約5000だった「いいね」が、9連敗目には1万5000まで急増した。

 開幕戦でヤクルト相手に大量リードして「よっしゃ、今年は優勝や!」と本気で思いました。まさに、それが油断でした。考えもしなかった逆転負けをして「これからは、もう油断しない」と、自分に言い聞かせるためにツイッターを書いていました。

9連敗するうち、辻のツイッターのフォロワーは6000人も増えた。そして連敗ストップした翌日(4月6日)野球をよく知らないマユリカの阪本を連れて甲子園観戦に行ったが、DeNAに無念の延長負け。試合後、辻のツイッターを知る阪神ファンに囲まれて「きょうの敗因は何ですか?」と問われる場面もあった。

上方漫才大賞の授賞式の日まで、阪神は1勝11敗1分け。実際のヒーローインタビューは1試合しか実現していない。一ファンとして、あまりの沈滞ムードを吹き飛ばしたいがためのネタ選択でもあった。

 父親が阪神ファンで、自然と僕もそうなったのですが、吉田監督(97~98年)、野村監督(99~01年)の時代は負けてばかり。弱かったのは事実ですが、それでもずっと応援していた。弱い分だけ勝った時は喜びが大きかった。弱いチームを見るのも面白いんですよ。

好きな選手は意外と渋い。かつては大和(現DeNA)が好きだった。いまは中野&小幡の二遊間に「中日で堅守を築いたアライバ(荒木雅博&井端弘和)のようになってほしい」と期待する。

かつて救援投手として活躍したドリス(16~19年)のコスプレで、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に遊びにいったこともあった。一緒に行ったのはマテオのユニホームを着たシカゴ実業の山本プロ野球。ちょうどハロウィーンの季節でUSJは仮装した人ばかり。スパイダーマンや、思い思いのキャラクターにふんした人たちの中で、ドレッドヘアの2人、ドリスとマテオが異様に目立ったのは言うまでもない。

開幕後の連続ツイートで注目され、ラジオ番組「MBSベースボールパーク番外編」では、阪神OBの八木裕と対談した。番組では「もしタイガースの監督だったら?」という話題で「新たな助っ人外国人を獲得したい」「佐藤輝のホームラン増にもつながるのでラッキーゾーンを外したい。右翼だけでも」と熱弁をふるった。

 打撃もいいのでショートの中野は固定したい。二塁は守備のいい小幡に期待。2ストライクに追い込まれると、ファウルに逃げることも難しい打撃は課題があるけれど、肩がいいのでゲッツーを取れる。甲子園は広いし、土のグラウンドなので、守りを重視したチーム作りが必要なんです。投手陣は打たせて取るタイプがそろっているし、一塁大山、三塁佐藤輝、捕手梅野、センター近本なら守り勝てる布陣。解説を聞いていると、狩野さんや赤星さん(いずれも阪神OB)も守備の重要性を説いているので、こういった人が監督をやってくれたら将来は明るいと思います。

お笑いコンビ「ニッポンの社長」の辻は阪神愛あふれるマスクを着用(撮影・加藤哉)

お笑いコンビ「ニッポンの社長」の辻は阪神愛あふれるマスクを着用(撮影・加藤哉)

結成は2013年。コンビの関係でいえば、辻がケツよりも4歳年長でNSCでも1期先輩になる。ネタを書くのも辻がメイン。ところが辻にも意外な弱点があった。極端な方向音痴で自分の仕事予定もよく分かっていない。マネジャー的役割のできるケツがいなければ、このコンビは動かないのだ。

ケツ (辻は)しっかり者ではあるんですが、どこか抜けた部分があるんです。仕事の件で一度伝えたことも、いつの間にかきれいに忘れてしまっている。携帯電話をサイレントにすることなく、一緒に舞台のそでにいて、派手な音が鳴り響いたこともありました。客席には聞こえなかったはずですが…。

コンビ名「ニッポンの社長」は、いかにもユニークで、一度耳にしたら忘れられない。その名前の由来は「実業家の与沢翼氏とケツが似ているから」との情報もあるが、どうやらそうでもないようだ。

 コンビ名を決めるまで、あまり時間がないまま、語感から、とりあえず試しで「ニッポンの社長」にしたんです。あまりカッコイイのは避けたかったし、逆に変な名前にしたかった。一度きりのつもりだったんですが、舞台に出るとコンビ名を出すだけで予想外に受けたので、そのまま続いているというわけで…。

ユニークな名前といえば「ケツ」という芸名もまた前代未聞。二人がコンビを組む前から「ケツみたいな顔やな」と冗談で笑い合っていた。マンガのような丸顔は、確かにお尻に似ている気もする。とはいえ、あまりに大胆な名付け。インパクトが強すぎる。

ケツ コンビで活動を始める際、この名前でいいかなと、吉本の人に「僕の名前はケツでいきます」と伝えたら、えらい怒られました。「ケツ? なめとるんか」「冷やかしで芸名を決めるもんやない」とぼろくそです。「いや、僕は本気です」「ケツでいきます」と押し通しました。今ではもう自分の名前として落ち着いたと思ってますし、ケツと呼ばれて抵抗もありません。

 まさか、ほんまにケツが芸名になるとは想像もしなかった。当時は「アホちゃうか」と思ったこともありました。

そのケツは独特の価値観を持っている。「食」へのこだわりが、やたら強いのだ。今よりずっと収入が少なかった頃、コンビニで気前よく買い物するケツを見た辻は「どこにそんなカネがあるねん」と不思議に思っていた(後から分かったのは、ケツは親から送金されていた)。

東京での舞台出演では、ギャラを上回る駅弁を買って新幹線で悠然と食べていた。最近は駅弁では飽き足らず、総菜やみそ汁を買い込んで新幹線に持ち込む。

ケツ その日の舞台のギャラよりも、駅弁の方が高いこともありました。考えてみたら、親から節約することを教えてもらわなかったんです。うまいものを食べたい、という気持ちが勝ってしまって。

まん丸な顔で笑うケツは、なんとも憎めないキャラクター。ネタ作りでは独自のセンスを持つ辻との二人三脚で、将来のトップ目指して全力で駆け上がる。

お笑いコンビ「ニッポンの社長」の辻(左)とケツ(撮影・加藤哉)

お笑いコンビ「ニッポンの社長」の辻(左)とケツ(撮影・加藤哉)

◆ニッポンの社長(にっぽんのしゃちょう) 

辻(つじ) 1986年(昭61)11月15日、京都市生まれ。NSC(吉本総合芸能学院)32期生。趣味は野球、ギター、ボウリング。身長183センチ。ミキの兄・昴生は花園大の同級生と最近判明。

ケツ 90年(平2)6月11日、奈良県生駒市生まれ。NSC33期生。趣味は野球、料理、ギター。身長162センチ。

コンビは13年結成。

キングオブコント20、21年決勝進出。21年NHK新人お笑い大賞優勝。22年上方漫才大賞新人賞。ことし5月には札幌、東京、大阪で単独ライブを実施。