[ 2014年2月10日8時55分

 紙面から ]空港に到着し、笑顔で質問に答えるフィギュアスケート男子の高橋(共同)

 フィギュアスケートの高橋大輔(27=関大大学院)が9日、ソチに到着した。「五輪は最後」という集大成の舞台で、SP曲「ヴァイオリンのためのソナチネ」を巡って、思わぬ騒動が発生。渦中の男は、注目の問題について「このタイミングで勘弁してくれ、というのはあったけど」とあっけらかんと笑い飛ばした。10年バンクーバー五輪の銅を上回る悲願の金を目標に、13日の男子ショートプログラム(SP)に向かう。

 聞かれる前から、ふき出していた。高橋は「SPの…」という質問が終わる前に「へ、へ、へ」と右手人さし指で鼻の下をこすって、苦笑いを浮かべた。

 高橋

 正直、びっくりしかしていない。ただこの曲を選んだのは、背景を知らずにこの楽曲がいいからなので。作った人が誰であろうと、どういう形であろうと、すばらしい曲だと思うので。それを表現することを考えてやります。

 タイミング的には最悪だった。高橋は1月下旬からモスクワ合宿を敢行。昨年11月末の右すね負傷からの回復にも力を注いでいた。最終調整の真っ最中だった2月頭に、佐村河内守氏のゴーストライター問題が高橋側に伝わってきた。

 高橋

 動揺はしないけど、びっくりした。このタイミングで、いやこのタイミング(五輪)だからかもしれないけど…。曲が素晴らしい。そしてその後から(佐村河内氏の存在を)知ったので。(動揺は)全然ですけど。でも勘弁してくれ、というのはあったんだけど。いろんな話(問題)は誰かが解決してくれれば。

 すでに日本連盟は、国際連盟(ISU)に対して「作曲者佐村河内守」の名前を削除することを依頼。13日の男子SPでは「UNKNOWN(作曲者不明)」で演じる見通しだ。

 3度目の五輪はもうすぐだ。「ソチにいくと決めてから、どこが限界かわからずに精いっぱいやってきた。いろんな思いがつまった五輪になると思う。何があっても五輪は最後。厳しいと思うが、出るからにはトップを目指して、僕の100%の演技をしたい」。フィギュア界をけん引してきた27歳は「佐村河内騒動」を笑い飛ばして、集大成の五輪に立つ。【益田一弘】

 ◆偽ベートーベン騒動

 全聾(ろう)の人気作曲家で「現代のベートーベン」と呼ばれた佐村河内守氏の楽曲が、別人によってつくられていたことが週刊文春で判明。6日には、18年間にわたってゴーストライターをしていた桐朋学園大の新垣(にいがき)隆講師が会見で謝罪した。その場で「耳が聞こえてないと感じたことは1度もない」と話し、騒動はさらに発展。7日には広島市が08年に授与した「広島市民賞」を取り消し、レコード会社は全CDの出荷を停止した。